(前編)の続き。去る12月3日(土)に開催された、ソニーの小学生向けイベント、<障がいのあるなしに関わらず、共に学ぶインクルージョン・ワークショップ『ペットボトルと牛乳パックでつくるヘッドホン』>を取材、その模様をリポート。
子どもたちは完成したヘッドホンを手にして前に出て、音響セットとつなぎ、音が聞こえるかを確認。すると、「聞こえる」「うわ!」と小さな声が。筆者も試してみたが、耳に当てたペットボトルの部分が振動しながらクリアな音が聞こえてきて驚いた。見た目は手作り感があるが、しっかり音楽が聞こえてくるのだ。
この後、子どもたちにスライドを見せながら「ヘッドホンで音が伝わる仕組み」を解説し、記念撮影などを行って、イベントは終了した。
講師を務めたソニー・太陽株式会社 人事総務部 広報・CSR室室長の佐藤祐親(さとう・ゆうしん)氏は、「今はマスクをしているから口元がわかりにくいけれど、目や動きを見て、喜んでいるな、というのがわかりますね。音が出た時の子どもたちの嬉しそうな表情に、ワークショップのやりがいを感じています」と話す。
佐藤氏は講師役を何度も務めているが、最近のワークショップで印象に残ったことがあったという。
「ある小学校で開催した際、支援学級の児童も一緒に参加したのですが、終了後のアンケートを読んでいたら、『今まで障がいのある人と接したことがなくて、最初は大丈夫かなと思ったけれど、一緒に楽しくやってヘッドホンができたからよかったです』という感想がありました。インクルージョン・ワークショップの目的のひとつとして多様性の理解があるので、そういうところをちゃんと感じてもらえていたことが嬉しかったですね。また、時々ですが、『障がいのある人に関するネガティブな意識が変わった』という感想もあります。なぜソニー・太陽がインクルージョン・ワークショップを開催しているかというと、障がいのある人を単に雇用しているだけではなくて、その人たちがいきいきと働いて、それを社会に発信することで、多様性に理解のある社会になるための一助になればいいな、という思いがあるからです」
昨今は日本でも、多様性を尊重して互いに受容する社会になるべくさまざまな取り組みが行われているが、こうした考えが広がれば、今の子どもたちが働き始める頃にはそれが当たり前になっているのだろうか。
「そういう意味では、インクルージョン・ワークショップというものがなくなるのが理想ですよね。障がいのある人もそうでない人も一緒に学んだり働いていることが普通である、という状態になれば、こういったイベントをする必要もなくなります。現在はそこに向けて取り組んでいるわけですが、いろいろな人がいるんだ、ということを理解しようとする意識を子どものうちから持ってもらいたいですね」と佐藤氏は語る。
今回のイベントは関東では久しぶりの対面開催だったというが、参加した児童に大きな学びをもたらしたのではないだろうか。
(取材・文/中山恵子)