2020年度から小学校で必修化されるプログラミング教育について、前編(10月11日配信)に続き紹介していこう。後編となる今回は、来年4月からの授業で子どもたちが触れることになる教材(ソフトウェアなど)について具体的に紹介したい。子ども向けプログラミング教育の普及活動を行う専門家・松田優一氏に引き続きお話を伺った。
“ビジュアルプログラミング”を入り口に
学校ではどのような教材が使われることになるのだろうか。松田氏は次のように推測している。「どの学校も予算に限りがある中での新しい取り組みです。今あるコンピューター室のパソコンを活かし、さらにプログラミングツールは無料のものを採用するという学校が多くなりそうです。ソフトウェアとしては、ビジュアルプログラミングを学べるScratch(スクラッチ)やViscuit(ビスケット)などのツールに注目が集まっています」。
ビジュアルプログラミングとは、通常、文字で作成するプログラムの命令を絵に置き換えた、初心者向けのわかりやすいプログラミング手法のこと。様々な命令が書かれたブロックを、画面上で積み木のように組みあわせ、最終的に簡単なアニメーションやゲームなどを作成する。プログラミング的思考を養うのに適しており、子どものための入門ツールとして世界の教育現場で採用されている。
たとえばScratchは、アメリカ、マサチューセッツ工科大学のメディアラボが開発した8歳から16歳向けのビジュアルプログラミングツールだ。英語をはじめ、日本語にも対応しており、Webブラウザがあれば誰でも無償で利用できる。プログラミングの経験がないという保護者の皆さんも、この機会にお子さんと一緒に挑戦してみてはいかがだろうか。
上級者を目指すなら“テキスト言語”も
より高度な学びを目指すために、テキスト言語を学ぶ場合もあるという。たとえば、イギリスで開発された「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」は、数千円ほどの小さな基盤に、キーボードやディスプレイをつないで利用する教育用小型コンピューターだ。汎用的なテキスト言語環境があらかじめ搭載されており、ゲーム作りから電子工作まで、さまざまな学びに応用できる。
「コストのかかるツールは学校での一括導入は少ないかもしれません。しかし余力があるなら家庭でもぜひこうしたツールに挑戦してみてください」と松田氏は語る。キーボードなどに子どものうちから慣れておくことも大切なのだという。
「長年プログラミング教室を開催し、数千人に上る子どもたちを指導してきましたが、低学年からICT機器に親しんでいた子どもたちは苦手意識が薄く、その後の伸びが実によいということを実感しました。小学校でのプログラミング教育は、読み書きにたとえるならば、えんぴつの持ち方を習うような段階のもの。考え方の基礎を作る大事な部分ですね。将来、より深いプログラミングを学ぶために、家庭でも早いうちに慣れておくことをおすすめします。もちろんあせらずに、ぜひ楽しみながら取り組んでください」(松田氏)。
お話を伺った方
松田優一氏「株式会社Natural Style 代表/一般社団法人プログラミング クラブ ネットワーク(PCN)代表」
ソフトウェア、アプリ開発に携わりながら、日本の子どもプログラミング教育の環境向上を目的としたPCNを設立。PCNではプログラミングの普及啓発、教育支援および政策提言などを行っている。初心者向けに開発された子ども用プログラミング専用パソコン『IchigoJam』を携え、「すべての子どもたちにプログラミングを」をテーマに世界各国を奔走中。
※Scratchは、MITメディア・ラボのライフロング・キンダーガーテン・グループの協力により、Scratch財団が進めているプロジェクトです。https://scratch.mit.edu から自由に入手できます。