昨日に続き、本日も一般社団法人日本私立大学連盟による調査「令和2年度奨学金等分科会報告書」内で行われた、コロナ禍における私立大学の現況調査の内容を見ていこう。
学部学生数が1万人以上の大学は学費減額措置なし
講義をオンラインで実施したなどの理由で学費(授業料・施設設備費等)の減額・返金等の措置を行ったと回答した大学は日本全国で5校(4%)。学部学生数が1万人以上の大学で措置を実施した大学はなかった。かわりに、昨日見たように数的規模の大きい大学は「オンライン環境整備(PC、ルーター等の貸与・支給) 」「給付金・支援金(一律)」といった支援を行ったわけだ。
措置の内容は「施設拡充費を5万円減額」「実験実習費を4割減免」「2020年前期に在籍していた学生に対し、5万円を後期学費から相殺する形で給付」などだった。
授業料は学位取得までのトータル経費であることに理解を!
今回、当サイトで本調査を紹介するにあたり、日本私立大学連盟事務局の教学支援課長・相坂太郎氏からコメントをお寄せいただいた。
「授業料等に関しては、令和2年9月に私大連としての見解、私立大学の『対面授業再開』と『授業料等』に関する見解を公表しております。
それをわかりやすくご説明しますと、『授業料』については、オンライン授業や対面授業などの各授業科目の実施コストを積み上げて計算しているものではありません。授業料は、入学から卒業(学位の取得)までをトータルで見据えて、そのための教育、その準備も含めて、総合的な教育環境を提供するための経費です。また、卒業年次でのキャリア・就職支援はもちろん、卒業後も同窓会・卒業生ネットワークなどを通じて得られる有形無形のサポートやメリットがプライスレスであるということも含め、トータルでご理解いただきたいと考えております。したがって、今回のようなコロナ禍で、一定期間、授業の多くがオンラインで提供されたとしても、ただちに減額・返還の対象となるものでありません。
『施設設備費』についても、単なる利用料としての経費ではなく、当該大学の将来の施設や設備の充実のための投資資金として位置づけており、教育研究環境の充実に向けて、キャンパスや設備の維持、管理等にあてられており、授業料等と同様に、減額・返還の対象となるものではありません。
また、今回の記事では取り上げられていませんが、令和2年春学期において、私大連加盟校125校のうち104校において、コロナ禍等で経済的に困窮している学生に対して、合計で約258億円の給付あるいは減免による支援が実施されました。しかも私立大学の場合、国からの補助金も一定割合あるにしても、その財源の多くを自前の財源に寄らなければなりません。
オンライン授業化への短期間での対応、キャンパス・教室の感染対策などについても、各私立大学の教職員が多くの時間と労力とお金を使って学生の皆さんの学ぶ環境を整備しました。こうしたことをご理解いただければ幸いです」
(取材・文/大友康子)
※出典:一般社団法人日本私立大学連盟刊行「令和2年度奨学金等分科会報告書」