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高校生が「志願したい大学」ランキング! 大学選びの傾向とは?(後編)

親世代とは大学進学率も価値観も異なる

日本の高校3年生に「志願したい大学」を尋ねた「進学ブランド力調査2024」(リクルート進学総研調べ)が発表された。その結果、「都市部に位置するアクセスの良い、大規模総合大学が高い人気」という傾向がみられたというが、さらに詳しい解説をリクルート進学総研・所長の小林浩(こばやし・ひろし)氏に話を聞いた。(前編)の続き

報道発表では、大規模総合大学が人気の理由として「高校生の価値観や学びたいことが多様化している」と解説しているが、これは高校3年生の春の時点で将来やりたいことや就きたい仕事が定まっていない生徒が多いともいえるのだろうか。

「今の高校生の親世代は90年代に大学生の年齢だった人が多いですが、1990年の大学進学率は24.6%(※1)と4人に1人だったので、高校生の時点で大学が短大か就職かなど進路を定めている人が多かったと思います。ただ、現在は大学進学率が上昇して2023年では57.7%(※1)となっていることから、大学進学者の目的志向性が低下しているというよりは、大学進学者のすそ野が広がったという見方が正しいかと思います。以前は“これを学びたいから大学に行く”という人が多数でしたが、“大学に行ってから学びたい事を探す”という人が増えている印象ですね」(※1:文部科学省の調査より)

キャンパスライフを楽しみたい、という声が多数

今回の調査では、例えば関東甲信越エリアの上位10大学は、1位:明治大学、2位:早稲田大学、3位:立教大学、4位:東洋大学、法政大学(同率)、6位:中央大学、日本大学、8位:青山学院大学、9位:千葉大学、10位:慶應義塾大学となっているが、いわゆる偏差値による分類とはまた違う結果がみえてくる。※詳しくは【進学ブランド力調査2024】地域別志願・知名度上位ランキング表(PDF)

「それぞれの大学には建学の精神があり、それに基づいて学部や学科の構成が大きく違ってきます。この調査では、偏差値という単一のものさしだけでなく、高校生から見た“志望したい大学”を明らかにすることを目的のひとつにしています。ですから、教師や予備校講師、保護者に同じ調査をしたら、また違った結果になるのかもしれません。また、今年の調査では、“キャンパスライフを楽しみたい”という声が多くみられました。彼らは高校受験の前後にコロナによる自粛の影響を大きく受けていたことも関係しているのかもしれません」(小林氏)

2%強が中退、自分に合う大学を選ぶことが大事

ひとくくりに大学といっても、学べる内容も校風もさまざま。充実した4年間を送るためには、自分に合う大学を選ぶこと、そのためのリサーチが大事だといえる。

「帰国便利帳の読者の方は、海外在住のことも多いかと思いますが、現在は日本の大学もオンラインでの発信に力を入れているので、ホームページを見たり、学生が発信している情報を探して見てみるのもよいでしょう。一時帰国中にオープンキャンパスに行けるとよいですが、開催していない場合でも、大学に連絡をして行けば案内してくれることも多いです。また、大学で取得できる資格や卒業生の就職実績、奨学金制度、留学制度などもよく調べたうえで、通いたい大学を選ぶとよいでしょう」

多くの大学を候補に挙げても実際に通えるのは1校なので、「自分に合うかどうか」はとても大事だと小林氏は言う。

「2023年度の中退者は65,540人で、割合では2.17%にのぼります(※2)。これは、学費が払えないといった問題だけでなく、ミスマッチが原因のことも多いです。中退者に聞いてみたところ、『文学部に行きたかったのに親が経済学部に行けといったから』『偏差値が高い方を選んだだけ』といった声がありました」(※2:文部科学省「令和5年度学生の中途退学者・休学者数の調査結果について」より全国の国公私立大学、短期大学、大学院及び高等専門学校の中退者数および中退者数の割合)

「充実した大学生活を送るためには、事前に調べておくことに加えて、そこに通う自分の姿がイメージできるかどうかも重要なポイントではないかと思います」と小林氏は高校生にエールを送っている。

(取材・文/中山恵子)