気になる新型コロナウイルスの感染症対策。寮では、一体どのような対策が講じられているのでしょうか。寮を有する5校に、緊急アンケートを実施しました。
「自室も含めて常時マスク着用」厳しいルールを設けている学校も
帰寮したら、玄関に置かれたアルコール消毒液で手指を消毒。建物に出入りをする際は、全学校でアルコール消毒の徹底を励行している。洗面所にも消毒液を設置している学校は5校中2校(そのうちの1校はうがい薬も設置)と半分を割ったものの、同2校では玄関や洗面所のほか、食堂や各フロア(エレベーターホールなど)にも消毒液を置くといった衛生管理を行っている。
自室の換気は「起床時、帰寮時、就寝前など」「1時間に1回以上」など生徒個人に任せている一方で、「廊下の窓を全開にして常に空気が流れるようにしている」と回答した学校が3校あり、共用部分の換気を心がけている様子がうかがえる。
なお、検温のタイミングは「朝晩の2回」が2校、「外出時」が2校、「起床時」が1校と、各校で対応が割れる結果となった。また、寮内でのマスク着用のルールについては、3校が「自室以外は常に着用」と回答。残りの2校では、「自室も含めて常時着用」(就寝時と入浴時以外)と、より厳しいルールを設けていることが分かっている。
緊急事態宣言中の行動規制半数以上が〝あり〟と回答
緊急事態宣言中の外出の規制について、「特になし」と回答した学校は1校にとどまり、3校は、「不要不急の外出は禁止。クラブ活動のみ認める」「必要最少限の買い物のみ可(1日1回30 ~40分以内)」「必要最少限の買い出しのみ可。ただし、感染拡大地域や繁華街への外出は禁止、5人以上の会食は禁止、外泊は原則禁止」など、「やむを得ない外出のみ認める」と回答している。また、より厳しい対応をとり、「緊急事態宣言中は全員帰省。宣言期間中は寮を閉めて、日本国内の滞在先で各自過ごしてもらっていた」という学校もあった。同校によると「保護者が海外在住をしている生徒の中には、宣言期間中、海外で家族と共に過ごしていた」例もあったという。
親元を離れていて行動のコントロールが難しい分、こうした学校側の対応についてもしっかり把握しておけると安心だろう。
ビュッフェスタイルを取りやめ定食スタイルの提供に変更など
「ビュッフェスタイルから定食スタイルへ変更」「香の物など、各自で取り分けていた自由提供の食品や、週に一度実施していたバイキング形式の食事提供を中止し、個別盛りに変更」など、食事の提供方法を変更した学校は2校。残りの3校についてはコロナ禍前から定食スタイルをとっているが、1校は「パンを個包装に変更した」という。
「席を1つずつ空け、横並びでの食事」が主流
座り方について、「向かい合わせにならないよう、同じ方向を向いて座る」ことを義務付けている学校は4校。どの学校も「席を1つずつ空けている」「4人用のテーブルを2人で使用」など、席数を削減している。なお、「対面」と回答した学校についても「間隔をあけた座席で座り、間にアクリル板を設置」するなど、飛沫防止に努めている。
自習室ではお静かに!人数制限を設けている学校も
自習室での「マスクの着用」はアンケートを実施したすべての学校で必須。また今まで以上に「私語厳禁」となっている。さらに、食堂同様「席は向かい合って座らず、同じ方向を向いて座る」「1つ隣の席を空けて座る」といった着席時のルールを設けている学校や、「大人数(目安は小教室5名以上、大教室10名以上)で使用しない」「平常時は定員6名としていたが、コロナ禍以降は半分の3名に設定している」「楽器演奏や歌などの音楽の練習ができる防音室は1回1名まで使用可能としている」といった具合に人数制限を設けている学校もあった。
このほか、マスクを外す機会を作らないことを徹底するため「自習室での飲食を禁止」している学校も。共用で利用するスペースについては、特に細かいルールを設定していることがうかがえる。
自粛していたイベントは条件付きで再開の兆し
寮生活の醍醐味でもある「新入生歓迎会」や「誕生日会」「クリスマス会」といったイベントは、残念ながら全学校で軒並み中止となっていたが、まん延防止等重点措置の解除などを受けて段階的に再開している学校もでてきている。最近(2022年3月時点)では、「開催場所を寮の食堂から学校ホールに変更する」「学年やグループによって日程を分ける」など、密を避けたカタチで開催する学校も
見られるようになってきた。
陽性者は離寮が原則日本国内の帰省先の確保を!
寮生が陽性になり、自宅療養となった場合は、「即時離寮し、日本国内の帰省先に滞在してもらう」と回答した学校は3校。日本国内に保護者等がいない場合は「事情を説明し、保健所の指示に従う」と回答した学校もあった。なお、全室個室の寮については「部屋食、専用個室シャワーブース、専用トイレを設ける」など、寮内で対応してくれる例もあったので、事前に学校に確認しておくことをお勧めする。
大勢で寝食を共にする空間だけに、濃厚接触者にならないよう、またならせないよう、どの学校も細心の注意を払っている。
早期から対策を徹底!全寮制の学校の例
今回協力いただいた5校とは別に、全寮制の学校にもアンケートを実施したところ、「キャンパス外から通学しない全寮制の利点を活かし、早くから帰寮者へのPCR検査を徹底してきた」という回答が得られた。さらに、「職域接種を活用したおかげで、全寮制の1、2年生全員が夏休み終了の時点で2回目の接種を完了していた」そう。
全寮制という特殊な環境の特性を生かし、細やかで迅速な独自のコロナ対策を講じてきたことがうかがえる。
アンケート協力校(50音順)/関東学院六浦中学校・高等学校、国際高等専門学校、土浦日本大学高等学校、同志社国際中学校・高等学校、茗溪学園中学校高等学校、立命館宇治中学校・高等学校
取材・文/本誌編集部、松井さおり イラスト/茂苅恵