2021年卒業予定者の採用面接が6月1日に正式に解禁され、就職活動が山場を迎えているが、今年は新型コロナウイルスの影響で専攻時期を遅らせる企業も目立っている。では、実際の就職活動状況はどのようになっているのだろうか。『株式会社ディスコ』(本社:東京都文京区)が運営する「キャリタス就活」学生モニターの6月1日現在の就職活動状況を見てみたい。
6月1日時点の内定状況 ~全体の64.7%が活動を継続中~
これによると、6月1日現在の学生モニターの内定率は64.0%。先月調査(5月1日現在)の50.2%から1カ月で13.8ポイント上昇したものの、前年実績(71.1%)を7.1%ポイント下回る数字となっていて、前々年(2019年卒者、65.7%)も下回っている。
近年、就職戦線は売り手市場を背景に早期化が進んできた。今年も序盤は早いペースで進行していたが、緊急事態宣言が出された4月以降は採用活動が停滞する企業が目立ち、内定出しのペースが鈍化。5月調査では前年同期比微減にとどまっていたが、この1カ月で前年との差が広がっている。
内定取得学生のうち、就職先を決めて就職活動を終了したのは50.4%。前年同期(54.6%)を4.2ポイント下回った。なお、内定者のうち44.9%が「就職活動を継続中」と回答している。
<6月1日現在の内定状況>
※「内定には、内々定を含む」
(%)
全体 | 文系男子 | 文系女子 | 理系男子 | 理系女子 | ||
内定あり | 64.0 (71.1) |
56.2 (64.3) |
63.9 (72.6) |
69.7 (73.7) |
71.4 (79.7) |
|
内定なし | 36.0 (28.9) |
43.8 (35.7) |
36.1 (27.4) |
30.3 (26.3) |
28.6 (20.3) |
|
内定者のうち | 就職先を決定し活動終了 | 50.4 (54.6) |
40.4 (47.1) |
41.0 (45.4) |
61.3 (66.4) |
68.0 (67.8) |
活動は終了したが複数内定保持 | 4.0 (6.4) |
3.8 (8.8) |
6.2 (5.9) |
3.5 (5.3) |
1.0 (4.2) |
|
進学などの理由で就職活動を中止 | 0.6 (0.8) |
0.9 (0.4) |
0.4 (0.0) |
0.9 (2.0) |
0.0 (0.8) |
|
就職活動継続 | 44.9 (38.3) |
54.9 (43.7) |
52.4 (48.7) |
34.3 (26.2) |
31.0 (27.1) |
(社)
全体 | 文系男子 | 文系女子 | 理系男子 | 理系女子 | ||
内定者数/平均 | 1.9 (2.1) |
1.8 (2.2) |
1.8 (2.2) |
2.2 (2.0) |
1.7 (1.9) |
※( )内は前年(6月1日現在)の数値
モニター学生全体を分母にとると、調査時点で就職先を決定して就職活動を終了した者の割合は32.2%。複数内定を保留しているなど未決定である者(3.0%)を合わせると終了者は35.2%となる。内定率の低下だけでなく、内定者における就職決定者の割合も低下したことで、前年(43.9%)より大きく減少した。
活動継続者は「内定あり」(28.7%)、「内定なし」(36.0%)を合わせて64.7%。内定の有無にかかわらず、多くの就活生にとってこの6月が大きな山場となったいえそうだ。
就職活動継続学生の動向 ~内定取得者が就職先を決めていない理由~
内定取得学生のうち、就職先を決めていない者(モニター全体の28.7%)にその理由を1つだけ選んでもらった。圧倒的に多いのが「本命の企業がまだ選考中」で半数を超えている(55.1%)。多くが本命企業の結果次第という状況のようだ。
次いで、前年に3番手だった「自分に合っているのか分からない」(20.7%)が数値を伸ばし、2番手となった。企業とのリアルでの接触が少なくなったことで、企業を判断できる材料が乏しくなったとも読み取れる。
逆に「複数内定で優劣つけがたい」という回答は9.8%で、前年から7ポイントほど下がり3番手となった。複数内定を得た者が減少したことにより、前年より大きくポイントを下げている。
一方、未内定の学生(モニター全体の36.0%)に内定獲得の見通しを尋ねたところ、「近々内定をもらえる見通しが立っている」は1割強(12.9%)にとどまり、「選考中の企業はあるが、内定が出るかは分からない」(59.4%)という回答が最多となった。ここに「選考中の企業はなく、まったく見通しが立っていない」(17.5%)を足し合わせると76.9%になり、未内定者の7割強が先の見えない状況にあることが分かる。
なお、「就職以外の道(進学、留年など)を考えている」という回答は1割未満で(9.9%)、採用活動の遅れにより、就職以外の進路も模索するタイミングもやや遅くなっていることがうかがえる。
【調査概要】調査対象:2021年3月に卒業予定の大学4年生(理系は大学院修士課程2年生を含む) 回答社数:1,204人(文男379人、文女355人、理男330人、理女140人) 調査方法:インターネット調査法 調査期間:2020年6月1日~4日 サンプリング:キャリタス就活2021学生モニター(2016年卒以前は「日経就職ナビ・就職活動モニター」)
(取材・文/松井さおり)