自らが変化を起こす担い手であるFTCJメンバー2人が登壇
昨日は、認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン(以下FTCJ/東京都世田谷区)主催のトークイベントから、校則をなくした世田谷区立桜丘中学校前校長・西郷孝彦氏登壇の模様をお伝えした。本日は、「子どもは助けられるだけの存在ではなく、自らが変化を起こす担い手である」をモットーにFTCJで実際に活動する生徒・学生の登壇の模様をルポする。
親の働きかけとFTCJの出前授業がきっかけで「自らが変化を起こす担い手に」
トークイベント後半の最初に登壇したのは、桜丘中学校出身の高校2年生・石川美桜(いしかわ・みお)さん。石川さんはご両親が発展途上国の諸問題を体験的に見学できる「JAICA地球ひろば」に連れて行ってくれた経験などにより、幼い頃から国際協力に興味を持っていた。さらに、桜丘中学でFTCJの出前授業などを体験することで、自らもFTCJ一員として活動を始めた。
「桜丘中学の学校行事の際にフェアトレード商品を販売することを企画し、西郷先生に許可をもらって実現させました。チョコレートを販売して、フィリピンの学校支援に役立てました。自分のやりたいことを実現することを評価してくれる家族や、自分で考えて行動することを認めてくれる桜丘中学の環境が力になりました。高校ではDV(ドメスティック・バイオレンス)について調べて、女性に対する暴力根絶のシンボルであるパープルリボンを配布するなど、現在も社会問題に向き合って活動しています」と石川さん。
親からアフガニスタンの地雷の絵本をもらい、2歳から社会問題に興味
次に登壇したのは小学生の時からFTCJで活動する大学1年生の中村伊希(なかむら・よしき)さん。FTCJでは、中学2年生のときに父の転勤先として在住していた香川県で弟とともにパンや菓子を作って販売し、学校に通えないインドの貧困家庭の子どもたちの支援に充てるなど、さまざまな活動をしてきている。パン作りには、弟が通っていた私立和光小学校の「目標を決めて1年間で何事かをなしとげる」というプログラムの一環で、天然酵母作りから行った経験も生かされた。
「2歳の時に親からもらった絵本でアフガニスタンの少年が地雷により傷つきベッドに横たわっている話を読んで衝撃を受け、その後も父親から勧められて新聞を読むなどするうちに、社会問題に興味をもつようになりました。街なかで募金活動があると、母は僕たちにお金を渡して募金箱に入れさせるなど、親も社会問題に興味を持っていると思います。最近はオーガニックコットンでTシャツを作り、売上金をFTCJの活動資金にするなどしています」と中村さん。
親や学校環境など周囲の影響が子どもの社会問題への関心を育む
お二人の話を聞き、親が子どもに与える影響の大きさや学校など環境の大切さをつくづく感じた。
質疑応答の時間にFTCJ代表・中島早苗(なかじま・さなえ)氏がそのものずばり「子ども自身が社会を変えられると考えて行動できるようにするにはどうしたらいいですか?」と尋ねると、石川さんは「身近な人の活動の様子だと思います」と言い、中村さんも「親の姿だと思います。親が興味を持っていることに子どもは自然と興味が向くし、自分が行動を起こしたときにほめて認めてくれる親の存在は非常に大きいです」と答えた。
西郷前校長の学校改革に感銘を受けるとともに、社会を変えようと活動する若者二人が受けた親や学校など周囲からの影響の話に、同世代の子の親として心底、身の引き締まる思いがしたイベントであった。
(取材・文/大友康子)