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渡航前とは大きく違う!?帰国前に知っておきたい日本の小中学校の学習環境|変化4

グローバル化、デジタル化、少子高齢化が進みゆくなかで、働き方改革もスタートして5年。様々な要因が絡み合い、義務教育は転換期を迎えています。今回は数ある変化のうち、「学習環境の変化」に着目。私立校だけでなく、公立校でも、時代に合わせた試行錯誤が始まっています。

変化4|部活動の地域移行

BEFORE

学校の教員が顧問を担当し、ときにサービス残業をして指導。活動場所は主に学校内。

AFTER

スポーツクラブ等の指導者が顧問に。 活動場所は学校以外の場所になり、 他校の生徒と一緒に練習することも。

休日の移行が軌道に乗れば、平日も実現か

2020年、文部科学省は、年度から公立中学校での休日の部活動を段階的に地域移行させることを発表した。これは今まで学校教育の一環として教員が行っていた部活動の指導を、地域のスポーツクラブや民間事業者等が行うように変えようという動きのこと。きっかけとなったのは文部科学省が主導する「学校における働き方改革」の一環で、顧問を務める教員の負担を減らすことだが、「子どもたちが享受するメリットも多い」と日本部活動学会初代会長の長沼豊氏は話す。

「活動場所が学校に限らなくなることで他校の生徒たちと合同で活動できるようになりますから、少子化が進む地域では廃部の危機から脱し、子どもたちは好きなスポーツや文化芸術活動に安心して取り組めます。また、顧問の先生の異動に影響されて活動内容が変わることがなくなり、同じ指導者、しかも専門的な力量を持った指導者から継続して指導を受けることもできるように」(長沼氏)。

ただし注意点も。スポーツクラブ等の会費は受益者負担で支払うため、保護者の出費は増えるという。「とはいえ、今までが教員のサービス残業によって成り立つ異常な状態でした。これで正常になると捉えるのがよいでしょう」(長沼氏)。

今後の地域移行は、やりやすい種目から順次進んでいく見通しだ。

「まずは休日の移行が3~5年かけてゆっくりと。その後、平日の移行が進むかどうかは状況次第になるでしょう。少子化により廃部になる部が多い地域に限っては、“待ったなし”の意識で取り組んでいるので、平日での移行の実現も早いかもしれません」(長沼氏)。

変化の例|「11種目で地域移行を実現して、部活動が大きく変わりました」/つくば市立谷田部東中学校(茨城県)

約1年の下準備を経て地域移行に踏み切った

校則の見直しHistory

2017年
取り組み方を変えて教員の負担の軽減を、という世論の高まりを受けて地域移行の下準備開始。

2018年
学校と学校外、両方の活動を把握する組織を始動。全国に先駆けて地域移行をスタート。

2023年
顧問の教員が指導を土日にしなくていいよう、学校外での活動日を土日に集中させる下準備開始。

現在、11種目もの部活動(※2)で地域移行を軌道に乗せている同校。初めの一歩を踏み出したのは7年前。部活動における教員の負担過多が問題視され始めた頃で、同校の動きは全国的に見ても非常に早かった。

「地域移行に必要なのは、学校の部活 動と、学校外での指導の両方を把握す る組織だろう。そう考えて、2017年 に“洞峰学園地区文化スポーツ推進協 会(以降、DCAA ※3)”の立ち上げを 決定しました。そして学校職員への周 知、DCAAのメンバー決定、受け皿と なる指導者・団体探し、活動費の協議 などの下準備を重ね、翌年にはDCAA を始動しました。生徒たちはすぐに順 応してくれて、当初から楽しんでいる 様子が見られました」(同校)。

学校外の施設や指導者のもとでする部活動は、各部、年30回程度。実施する曜日は流動的で、平日にあたることも土日や祝日にあたることも。

「今後は文部科学省の発表(右ページ参照)に沿い、平日は学校の部活動、土日は学校外の施設や指導者のもとでする部活動と固定する予定です」(同校)。

子どもたちの反応

  • 部活動が大好きなので、学校での活動のない日にも練習できてすごく嬉しい!
  • 地域のスポーツクラブの先生は専門的なことを教えてくれる。上達していける予感アリ。

※1…2022年9月、東京都小学校PTA協議会調べ。 ※2…運動部8競技10種目(陸上競技、バレーボール、卓球、男女ソフトテニス、サッカー、野球、男女バスケットボール、剣道)と文化部1種目(吹奏楽)。 ※3…「Doho Cultural&Athletics Academy」の略。

あわせてチェック! PTA業務の外部委託も見られる

登下校の見守りや学校行事の手伝いを無償で行うPTA。活動内容のスリム化を望む保護者は70.8%(※1)と多く、近年、活動を外部委託する例が少しずつ増加。委託先も人材派遣会社、警備会社、旅行会社と多様化してきている。

お話を伺った方

日本部活動学会 初代会長
長沼 豊(ながぬま・ゆたか)氏

教育学者で日本教育実践研究所所長。学習院大学元教授。著書は『部活動の不思議を語り合おう』(ひつじ書房)ほか。2015年より、日本各地の部活動改革に取り組む。

取材・文/本誌編集部・庭野真実 イラスト/太田マリコ
※今特集に掲載している情報は、2024年2月現在のものです。国の教育方針等は変更される場合もあります。

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