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新成人が読んだ本、18歳と20歳で違いアリ(前編)

18歳と20歳の、昨年一年間の書籍購買動向を比較調査

成人の日(1月10日)を前にした1月6日、紙の本の通販と電子書籍を取り扱うハイブリッド型総合書店「honto」は、「20歳」と、2022年4月の民法改正による成人年齢引き下げによって新しい成人となる「18歳」の、直近一年間の書籍購買動向を比較した結果を発表した。以下、詳しく見ていこう。

ジャンル総合|20歳は『呪術廻戦』、18歳は学習参考書がトップ3を独占

20歳 18歳
第1位 呪術廻戦(15)/芥見下々/集英社 速読英熟語/岡田賢三/増進会出版社
第2位 呪術廻戦(14)/芥見下々/集英社 漢文早覚え速答法 共通テスト対応版/田中雄二/学研プラス
第3位 呪術廻戦(16)/芥見下々/集英社 古文上達[基礎編]/仲光雄/Z会

紙の本と電子書籍の全ジャンル総合ランキング(すべてのジャンルを総合した集計)では、「20歳」は第1位が『呪術廻戦』の15巻、2位が14巻、3位が16巻。1位から20位までの20冊のうち、『呪術廻戦』のさまざまな巻が17冊もランクインした。その人気のすさまじさを実感する。

一方「18歳」は、大学入試に出る熟語・構文をほぼすべてカバーする増進会出版社(Z会グループ)の『速読英熟語』が第1位に。第2位から第4位までを漢文、古文、英語の学習参考書が占めた。「18歳」は上位20タイトルのうち4割にあたる8冊を学習参考書が占め、『呪術廻戦』が11冊、『鬼滅の刃』が1冊ランクインした。18歳は受験を背景にまず勉強、そして息抜きにコミックを読んでいることが伺えた。

文庫|「TikTok売れ」の本、若者向けの文学的名作、ともにランクイン

20歳 18歳
第1位 そして、バトンは渡された(文春文庫)/瀬尾まいこ/文藝春秋 桜のような僕の恋人 /宇山 佳佑/集英社
第2位 かがみの孤城 上 (ポプラ文庫)/辻村深月/ポプラ社 かがみの孤城 上(ポプラ文庫) /辻村深月/ポプラ社
第3位 人間失格 (新潮文庫)/太宰治/新潮社 こころ 改版 /夏目漱石/新潮社

日本でもSNSのTikTok上で流れるショートムービーがきっかけとなり、そこで紹介された商品が爆発的に売れる「TikTok売れ」が話題となった2021年。書籍にもその傾向はみられる。

例えば、18歳で1位となっている『桜のような僕の恋人』は初版発行はTiktokが盛り上がる前の2017年だが、2020年の初夏に一般のTikTokユーザーが音楽に合わせて本を映し、短い感想を載せただけの動画を投稿。その動画にたくさんの「いいね」がつき、コメント欄はこの作品を評価するコメントで盛り上がり、それを読んだ人が次々と本を購入するようになっていった。2020年11月時点での発行部数40万部のうち、TikTok効果は12万部ほどあったという(日本出版販売が運営するWEBサイト「ほんのひきだし」が取材した際の集英社担当者の弁)。その勢いは2021年も続き、現在の発行部数は約60万部に上る。

ほかにも、18歳で第5位・20歳では4位の『余命3000文字』(村崎羯諦/小学館)、18歳で第9位・20歳で6位にランクインしている『余命10年』(小坂流加/文芸社)のいずれも、そのヒットのきっかけは「TikTok売れ」だ。

また、面白いのはそれぞれの第3位。20歳に太宰治の自伝的小説ともいわれる『人間失格』、18歳に国語の教科書などにもよく掲載されている夏目漱石の名作『こころ』が登場している。若者向けの文学的名作は時代を問わず読まれているといえる。

明日も、ランキングの続きを見ていこう。

(取材・文/大友康子)