厚生労働省は5月「第8回 21世紀出生児縦断調査」の結果を公表した。母親が子どもの学校以外での学習によく関わりを持っている家庭のほうが、子どもの勉強時間が長くなり、また、1カ月間に両親が読む本の冊数が多いほど、子どももよく本を読む傾向にあることなどが明らかになった。
「21世紀出生児縦断調査」は、厚生労働省が、日本全国の2010 年に生まれた子どもを継続的に観察し、毎年同じ集団を調査するもの。
今回の調査時期は2018年5月 25 日で、調査対象児は8歳(小学2年生)。調査結果では、子どもの携帯電話の所有率や学校以外での勉強時間、読書習慣といった子どもの生活の状況について報告している。
携帯電話を持たせるのは、小学校1年生からが最多
まず、2010年生まれの子ども(現在小学2年生。以下、子ども)に、スマートフォンを含む携帯電話(以下、携帯電話など)を持たせているかどうかをたずねたところ、「持たせている」は 17.9%、「持たせていない」は 81.9%となった。
■子どもに携帯電話(スマートフォンを含む)を持たせているか
また、子どもに、「携帯電話などを持たせ始めた時期」についてきいたところ、「小学1年生から」が 68.8%と最も高かった
■携帯電話(スマートフォンを含む)を子どもに持たせ始めた時期
なお、携帯電話を持たせた理由については、「子どもと連絡ができるように」が 86.3%と最も高く、次に「子どもの居場所を確認するため」が 62.7%、「きょうだいが持っているから」が 10.3%の順となった。
小学校入学後は、塾や習い事などで、子どもが保護者と離れて行動することも多くなるため、連絡や居場所確認などの安全対策のために、携帯電話を持たせるという親が多いと考えられる。
母親の関わり方が、子どもの家庭学習時間に影響
子どもが日常的にやっている学校以外での1日の勉強時間(宿題や学習塾等を含む)をきいたところ、「30 分~1時間未満」が 46.2%と最も高く、これに続き「1時間~2時間未満」が25.8%、「30分未満」が24.1%の順だった。
次に、母親の家庭学習への関わり方と子どもの学校以外での学習時間の相関関係をみてみる。
調査では、子どもが学校以外でする勉強について、母親に「勉強をするように言っている」、「勉強する時間を決めて守らせている」、「勉強を見ている」、「勉強をしたか確認している」の4項目について、「よくある」「ときどきある」「ほとんどない」「まったくない」のいずれかで回答してもらい、その回答ごとに、子どもの1日の勉強時間を表している。
すると、4項目全てで、「よくある」と答えた母親の子どものほうが、「ときどきある」「ほとんどない」「まったくない」と答えた母親の子どもよりも、1日の勉強時間が長くなることがわかった。
■子どもの学習時間~母親が子どもに勉強するよう言っている~
■子どもの学習時間~勉強する時間を決めて守らせている~
■子どもの学習時間~母親が子どもの勉強を見ている~
■子どもの学習時間~母親が子どもが勉強したか確認している~
両親が読書家であれば、その子どももよく本を読む
子どもの読書の習慣についても調査している。まず、子どもが1カ月間に読む本(児童書、絵本など)の冊数をたずねたところ、「2、3冊」 が 26.6%と最も高く、次いで「4~7冊」が 24.5%だった。
さらに、1カ月間に母親や父親それぞれが読んだ本(文庫、単行本など)の冊数と、その子どもが読んだ本(児童書、絵本など)の冊数の相関関係をみると、母親、父親ともに冊数が多いほど、子どもが本を多く読む傾向にあることがわかった。
■1カ月間の母親と父親の読書冊数と子どもの読書冊数の関係
注:上記はそれぞれ、第8回調査の回答を得た者のうち、母と同居している者(総数 24,322)および父と同居している者(総数 22,780)を集計。
仕事や家事などで忙しい大人が、多くの本を読む時間をとるのは難しいだろう。だが、図書館や書店に行ったり、自宅で本を読んで過ごすなど、家族で本を楽しむ時間を持つことで、子どもが本に興味を持つきっかけになるかもしれない。
(取材・文/橘 晶子)