自立心が強い子になるために親がしていることとは?(前編)

社会で自分らしい人生を歩んでいくために、子どもに自立心を身につけてほしいと願っている保護者は少なくないだろう。子どもが自立心を身につけるためには、親はどう働きかければいいのだろうか。

オンラインイラスト教室を運営する株式会社アタムのアタムアカデミーは、小学生の子どもがいる保護者303人を対象に「子どもの自立心に関する意識調査」のアンケート調査を実施し、その結果をランキング形式で公表した。早速、調査の結果を見てみよう。(調査期間:2024年8月24日~9月7日、有効回答数:303人〈女性209人/男性94人〉、以下調査結果はすべて株式会社アタム調べ)

自立心が強い子になってほしいと願う親は9割以上

まず、小学生のお子さんがいる保護者に「お子さんに、自立心が強い子になってほしいと思うか」と聞いたところ、「とても思う」「まあ思う」と答えた人が97.0%にのぼった。ほとんどの親が「自立心の強い子に育ってほしい」と思っていることがわかった。

「手や口を出さず見守る」との回答が1位

子どもの自立心が強くなるためにしていることを聞いたところ、1位は「手や口を出さず見守る(76人)」だった。2位は僅差で「よく褒める(72人)」、3位は「子どもに考えさせ決めさせる(50人)」となった。

この結果より、先回りせず、子どもに自分でやらせてみるという人が多いようだ。また「褒める」「意思を尊重する」など子どもの内面に寄り添い、自立へのモチベーションを高めようと心がけている人も多いことがわかった。

失敗を生かすという考え方も

では、具体的に普段どのようにしているのか、保護者からあがった声を見てみよう。

<1位 手や口を出さず見守る>

  • 何をするにせよ、なるべく答えを教えない。自分で何でもやってみる(30代 男性)
  • 失敗も必要な経験と考え、忘れ物や宿題などの声かけは最低限にしています。忘れ物をして困ることで、「次は忘れないように気をつけよう」と失敗を生かしてくれることが理想です(30代 女性)
  • 失敗しそうなときも、あえて口出ししない(40代 女性)

子どもが失敗しそうなときにはつい先回りしてしまうという人も多いかもしれないが、「自立心のために」とぐっと堪えている人も多数。危険がなければやらせてみることが大事、と考えている人が多いようだ。

<2位 よく褒める>

  • 過去に失敗したことがあっても、次に上手くいったときは大げさなぐらい褒めるようにしている(30代 女性)
  • できたときはしっかり褒める(40代 男性)

成長したところや頑張ったことを見つけたら、しっかり褒めるようにしている人も多数。「意識しないと褒めるのは難しい」という人もいて、悪いことは反射的に叱れても、褒めることは意識しないと難しい傾向もあるようだ。

<3位 子どもに考えさせ決めさせる>

  • 自分で考えさせる。「何がしたいか」「何になりたいか」など、他人の基準ではなく自分の価値観で選ばせている(30代 男性)
  • 「宿題はいつやる予定?」「明日きちんと起きるにはどうしたらいいと思う?」など、とにかく自分で考えさせる(50代以上 女性)

「○○するためには、どうしたらいいと思う?」など子どもに質問して、思考を促すようにしている人も多い。1日のタイムスケジュールや勉強する頻度などをお子さん自身に考えさせているという家庭も。また「自分で決めたことに対して、責任をもつように」と伝えている人もいた。

4位 自分のことは自分でさせる>

  • 自分のことは自分でさせる。上靴やサッカーで汚れた靴下・ユニフォームは自分で洗う(30代 女性)
  • 部屋の掃除などは自分でやらせている(40代 男性)
  • 自分のことは自分でやれるようにしています。興味をもち始めた料理もアドバイス程度にして、本人に任せています。盛り付けや台所・道具の片づけるまでやって終わりだと伝えています(40代 女性)

できることは学年や年齢によって変わってくるだろう。そのため、誕生日がくるたびに、やることやルールを変えているという家庭もあった。

5位 子どもの意思を尊重>

  • 好奇心をもってやりたいと自発的に言ったことは、できるだけチャレンジできるよう協力する(40代 女性)
  • できるだけ本人の意見を聞いて、尊重してあげる(50代以上 男性)

習い事を始めるときや、旅行の行き先を決めるときなどに、子どもの気持ちを尊重しているというコメントが寄せられた。予算や時間の都合上やりたいことをすべて叶えてあげるのは難しい場合や自由に選ばせてあげるのが難しい場合などは、選択肢を用意しているという家庭もあった。

6位 失敗しても責めない>

  • 失敗しても責めないで見守る(40代 女性)
  • 失敗してもどうのこうのとジャッジしない(50代以上 男性)

ただし「ふざけたり怠けたりして失敗したなら、ちゃんと叱る」という声も。

7位 お手伝いをさせる>

  • 「食事の準備や片付け」「洗濯物畳み」「部屋の掃除」など、年齢に応じた家事を任せています(30代 女性)
  • 長期休みはお手伝いをしてもらう(40代 女性)

強制的にお手伝いをさせるのではなく、「一人暮らししたときに役立つように」「家族で助け合いが必要」など、意図をお子さんに説明している家庭もあった。

明日も引き続き、この調査結果の続きを見ていこう。

(取材・文/小野眞由子)

特集|「海外の大学に行きたい!」と言われる日に向けた備え|体験談4 IBディプロマ資格が取れる高校からイギリスの国立大学に行ったケース


Imperial College London|機械工学専攻

K・Sさん
幼稚園から小5までアメリカの現地園・現地校に通い、帰国後に立命館宇治中学校・高等学校に入学。高校ではIBコースを選択した。

海外の大学までの道のり

中2で東大と海外大学進学を考え始めた。

高1になってから親に相談。海外大学のリサーチも開始した。

高2から進学に向けた勉強を開始。SAT®を受けた。

高3でTOEFL®を受けた。8月には奨学金の申し込みをして、9月に合格(受給決定は大学具合格後)

高3の11月に今の大学を受けると決めた。1月に出願。3月に合格。

IBディプロマを取得。高校卒業年の9月にイギリスへ。現在、大学3年生。

先に奨学金獲得のために奔走してから出願準備

「世界最高峰の研究開発に携わって知識と技術を身に付け、日本の宇宙開発に貢献したい」との思いで海外大学への進学を決めた杉本さん。高3にあがってからは、まず、奨学金獲得のために奔走したという。

「奨学金を取得しないと海外大学には進学できないと親とも話してわかっていたので、必死に探して応募。公益財団法人柳井正財団の『公募制学校推薦海外大学奨学金(予約型)』の取得が叶うことになって嬉しかったです。Imperial College Londonに惹かれた理由は、宇宙開発に限らず、さまざまな分野で最先端の研究開発が行われていること。また、強いロケットの学生チームがあると知ったときは心が躍りました。この大学で機械工学を専攻すれば、自分がどのようなかたちで宇宙開発に携わっていきたいかがはっきりするだろうと思いました」(K・Sさん)。

出願前は書類の作成に苦労した。

「Imperial College London以外にも何校か受けたのですが、応募書類も記入内容も学校ごとに違っていて大変でした。年に数回の進路相談や応募書類の添削、奨学金の応募まで、立命館宇治の先生には手厚くサポートしてもらいました」(K・Sさん)。

現在は、大学の課外活動に夢中。

「例えばロケット製作プログラムでは、二段式ロケットや再生冷却エンジンの開発を学生だけで行っています。日々、挑戦です」(K・Sさん)。

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特集|「海外の大学に行きたい!」と言われる日に向けた備え

国際ロボコンで日本の高校生チームが金メダル! 日本のスタッフに話を聞いた(後編)

国際大会はすべて英語、強化合宿も開催

国際ロボット競技会「WRO(World Robot Olympiad)」の国際大会「WRO 2024 国際大会」が11月28日~30日の3日間にわたりトルコ共和国イズミルで開催され、日本からは計14チームが参加。高校生の2チームが金メダルと銅メダルを受賞するなど見事な成績をおさめた。※トップ画像はトルコ入りした日本チームと応援団。(C)NPO法人WRO Japan

「帰国便利帳」では、NPO法人WRO Japan 事務局長の櫻澤由里子(さくらざわ・ゆりこ)氏に取材。(前編)に続き、(後編)では国際大会の様子を中心にお伝えする。

Japan決勝大会で選抜されたチームは、国際大会に備えて、NPO法人WRO Japanが主催する2泊3日の「チーム強化合宿」に参加、技術力や表現力を磨いたという。

「競技にはいくつかの部門があり、発表部門では自分でプレゼンを行います。Japan決勝大会までは日本語でよいのですが、国際大会は英語で発表しなければなりません。国際大会は場内アナウンスから競技まですべて英語なんです。競技エリアにはコーチは入れないので、子どもたち自身が英語で伝えなければなりません。そのため、強化合宿では英語しか話してはいけない時間をつくるなど、英語の練習もしました」

競技と国際交流で成長する子どもたち

そして迎えた国際大会。選手とコーチを合わせた46名に保護者などの応援団も加わり、計101名がトルコ入りしたという。

「実際にメダルをとるなど良い成績を残せたことで本人たちもとても喜んでいました。日本は毎年入賞していますが、他の国々も力を入れてきたことで、ここ数年は日本チームのメダル獲得が少し難しくなってきていたので、日本チームの好成績をとても嬉しく思っています。発表部門に出場した小学生は、特訓の成果があって当日はきれいな英語で発表していたことも印象に残っています。また、主催者側のミスで日本の中学生のチームの調整場所がなかったのですが、そのチームの子は『チェア』と連呼しながらなんとか伝えたようです。そういった体験が子どもたちを強くすると思います」

(C)NPO法人WRO Japan

競技以外にも、さまざまな国・地域の子どもたちと国際交流をはかれることも本大会の大きな魅力だという。

「子どもたちは名刺代わりのカードやお菓子を配ったりしています。英語が母国語ではない国や地域の子どもも多いので、英語力はあまり気にせず、コミュニケーションをとっていますね。交流の場では民族衣装を着る人も多く、日本チームも着物や法被を着たりして楽しそうでした。国際交流をする中で自分を表現する力も大きく育ってくれるといいなと思います」

(C)NPO法人WRO Japan

“恩返しをしたい”とOG・OBの声

WROのスタートから20年。初期に参加した子どもたちが成人し、OB・OGとしてJapan決勝大会や強化合宿を手伝ってくれる人も多いという。

「“良い経験をさせてもらったから恩返しをしたい”と言ってボランティアとして帰ってきてくれるかつての子どもたちも多く、事務局冥利に尽きます。より多くの子どもたちに創造力、課題解決力、イノベーション創出力の育成環境を提供できるように引き続き努めてまいります」

2025年のJapan全国大会は東京で、国際大会はシンガポールで開催予定だ。

(取材・文/中山恵子)

国際ロボコンで日本の高校生チームが金メダル! 日本のスタッフに話を聞いた(前編)

2024年は87の国と地域から約600チームが参加

 小中高校生が参加する世界最大級の国際ロボット競技会「WRO(World Robot Olympiad)」。その頂上決戦ともいえる「WRO 2024 国際大会」が11月28日~30日の3日間にわたりトルコ共和国イズミルで開催された。今年は87の国と地域から約600チームが参加し、日本からも計14チームが参加。その結果、高校生の2チームが金メダルと銅メダルを受賞、さらに中学生を含む4チームが8位以内に入賞するという素晴らしい成績をおさめた。※トップ画像は表彰式の様子。(C)NPO法人WRO Japan

 今回、「帰国便利帳」では、大会の趣旨や国際大会の様子を、NPO法人WRO Japan 事務局長の櫻澤由里子(さくらざわ・ゆりこ)氏にうかがった。 

国内地区予選会、Japan決勝大会を経て、国際大会へ

 WROは、2004年にシンガポールサイエンスセンターの発案により始まった国際的なロボット競技大会で、世界中の小学生から高校生までを対象に、科学技術を身近に体験できる場を提供し、創造性と課題解決力を育成することを目的に開催している。日本は第1回国際大会の立ち上げから協力していたと櫻澤氏は話す。

「2008年に横浜で国際大会が行われたときの参加国数は日本を含めて24か国でしたが、現在では90近くに増えました。日本においても、プログラミング教育の必修化やSTEM教育への関心の高まりを受け、グローバルに競い学び合う教育の場として、産学官連携のもと国内地区予選会数や参加チーム数を増やしながら継続開催をしています」

「国内地区予選」というのは、日本各地で主に7月~8月上旬にかけて開催されているWRO Japan公認の予選会のこと。国内参加チーム数は2004年は約300だったが、現在は1000を超えている。地区で優勝したチームはJapan決勝大会に出場できるが、このほかに事前審査に参加する競技もある。そして、例年8月下旬に開催されるJapan決勝大会で優秀チームを選抜し、日本の代表チームとしてWRO国際大会に参加する。

(C)NPO法人WRO Japan

中学や高校から、小学生は塾からの参加が多い

「選手2~3名にコーチ(18歳以上の大人)1名が1チームになります。中学校や高校のクラブや工業高校からの参加のほか、小学生の場合はプログラミング教室やロボット教室といった塾からの参加が圧倒的に多いです。また、国際大会の規定では、エレメンタリー、ジュニア、シニアの部という分類をしていますが、日本の小中高の年齢分けとは少しずれています。例えばシニア部門は19歳までなので、日本の大学1年生や高専4年生も参加可能です」

今年の決勝大会は富山県で開催され、170のチームが参加した。その結果、14チーム(選手とコーチを合わせて46名)が日本代表に決まり、トルコ国際大会に出場した。

続きは明日掲載の<後編>に掲載。

【WRO 2024 トルコ国際大会】日本からの入賞チーム(8位以内)一覧

◆ROBOMISSION…ミッションを攻略する自律型ロボットを製作し、その能力を競う部門

ジュニア部門(参加114チーム)
5位 Hot Chicken(群馬)
7位 AMICUS GIRLs(沖縄)

シニア部門(参加 104チーム)
1位  YTHS 2BY(愛媛)
3位 meiden(愛知)
6位 AMICUS R2K(沖縄)

◆ FUTURE INNOVATORS …テーマに沿ったロボットシステムを提案し発表をする部門

シニア部門(参加 49チーム)
7位 ULTRA S(静岡)

(取材・文/中山恵子)

特集|「海外の大学に行きたい!」と言われる日に向けた備え|体験談3 日本の高校資格(私立)が取れる高校から日本の大学を経てアメリカの州立大学に行ったケース 


東京大学|理二→UC Berkeley|認知科学専攻

K・Fさん
生後6ヵ月から4歳までをベルギーで過ごし、一度帰国して小1から小5までアメリカの現地校に通った。中1からは私立中高一貫校である渋谷教育学園渋谷中学高等学校へ。大学は東京大学理科二類と海外大学を併願。

海外の大学までの道のり

高1の3月に東大と海外大学の併願について親に相談。

高2の2月にTOEFL®を受験。夏には海外大学の受験を決意。

高2の7月に奨学金を申し込んだ。高3春に海外大学のリサーチ開始

高3の3月と5月にSAT®を受験。9月に受ける海外大学を決定。

高3の10月(Early)と1月(Regular)に出願。奨学金は10月に受給決定。

高3の3月合格。一度は併願した東大に進学したが9月からアメリカへ。現在、大学1年生。

エッセイは15回程書き直して納得できた

東大に入学したK・Fさんが、やはり海外大学に行こうと思い直した理由は、自身の視野が狭くなっていく可能性を恐れたからだという。

「日本だと自分と似たようなバックグラウンドや考えを持つ人が大半です。居心地はいいのですが、より大きな成長を望むには、海外で視野を広げることが必要ではないかと考えました。進学を決めたUC Berkeleyでは、専攻する認知科学を、高いレベルで文理を融合させて幅広く学ぶことができます。また、好きだった渋谷教育学園渋谷中学高等学校(渋渋)の帰国生の取り出し授業のように、議論や発表が活発な授業が多いです」(K・Fさん)。

受験対策としては、エッセイに一番苦労したという。

「課外活動で特別目立つものがなかった私は、もともとの英語力、収集した情報の量、親のサポート、先生の推薦状、そしてエッセイのおかげで受かったと思います。合否に関わるCommon App Essayは、6回くらいテーマを変えたうえ、決めたテーマでも15回ほど書き直しました。無地の紙を何枚も使って、自分の強み、弱み、将来の夢、今までの活動をマインドマップに書き出し、最後は『これがないと私という人間は語れない』という基準で取捨選択。渋渋の先生や海外大の塾の先生に何度も添削をお願いして、細かい表現にもこだわりました」(K・Fさん)。

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「海外の大学に行きたい!」と言われる日に向けた備え

Z世代、教育システムの課題は「時代遅れのカリキュラム」

各世代が考える「日本の教育システムの課題」とは?

昨日は、世界最大規模の世論調査会社イプソス株式会社(日本オフィス所在地:東京都港区)が日本を含む世界30カ国2万3754人を対象に行った、現在の“教育”に関する意識調査「教育モニター2024」をチェックした。日本の教育システムを「良い」と回答した日本人は19%で、その割合はグローバル比較では30カ国中24位という結果であった。

本日は、Z世代(1996~2012年生まれ)、ミレニアル世代(1980~1995年)、X世代(1966~1979年)、ベビーブーマー世代(1945~1965年)、各世代が考える「日本の教育システムの課題とは何か」を見ていこう。

ベビーブーマー世代とZ世代、課題認識の差が顕著

日本の教育システムが直面している課題を問うと、Z世代は「時代遅れのカリキュラム」、その他の世代は「教員教育が不十分」と考えていることがわかった。特に、ベビーブーマー世代の「教員教育が不十分」45%に対し、Z世代の同回答は2位で27%と、20ポイント近い差がつき、直近で教育を受けてきた世代との課題認識の差が明らかになった。

Z世代は他世代に比べると、現在の日本の教育システムに肯定的しつつも、カリキュラムをどんどん時代に即したものにしてほしいという、より高い希望を抱いているようだ。

教育現場は時代に合わせた適切な環境・対応を整備

今回の調査結果について、イプソス株式会社代表取締役社長の内田俊一氏(うちだ・しゅんいち)氏は次のように述べる。

「今回の調査では、実際に最近まで教育を受けていた世代とその上の世代で、教育に関する問題意識が異なることがわかりました。ミレニアル世代より上の世代は、教員への不満を見せていますが、Z世代はそれよりもカリキュラムを時代に沿ったものに変えていってほしいと考えています。

また、Z世代は、他の世代よりも、現代の教育システムに対して肯定的です。『教育』を取り巻く環境やその課題に関する報道に日々触れ、その内容から他世代はポジティブなイメージを持ちづらい状況があるのかもしれないですが、実際の教育現場は、政策や学校、教員の尽力により、世間一般が抱くイメージよりも、時代に合わせた適切な環境・対応が整備されているということではないでしょうか。

本調査は今後も継続的に実施していきます。どのような変化が見られるのかはまたお知らせしていきます」

※イプソス「教育モニター2024」調査レポート(日本語)

※グローバルサイト(英語)

(取材・文/大友康子)

自国の教育システムの評価、日本は30カ国中24位

日本における世代ごとの教育カリキュラムへの意識調査

世界最大規模の世論調査会社イプソス株式会社(日本オフィス所在地:東京都港区)は、日本を含む世界30カ国2万3754人を対象に現在の“教育”に関する意識調査「教育モニター2024」を実施。一部グローバル比較をしつつ、日本の調査結果をZ世代(1996~2012年生まれ)、ミレニアル世代(1980~1995年)、X世代(1966~1979年)、ベビーブーマー世代(1945~1965年)に分けて集計し、発表した。

果たして、各世代は今の日本の教育システムをどのように考えているのか? 世代による違いはあるのか? 今日と明日とで、詳しく見ていこう。

【 調査概要 】

調査方法 イプソス グローバルアドバイザー調査プラットフォーム、IndiaBus プラットフォームを使用したオンライン調査
調査対象 世界30カ国2万3754人(日本人2000人)
インドの18歳以上、カナダ・アイルランド共和国・マレーシア・南アフリカ・トルコ・米国の18~74歳、タイの20~74歳、インドネシア・シンガポールの21~74 歳、その他の国の16~74歳
実施日 2024年6月21日(金)~7月5日(金)

教育システムを評価する日本人は5人に1人

まず、世代を分けずに全体でみると、日本の教育システムを「良い」と回答した日本人は19%。グローバル比較では30カ国中24位という、あまり芳しいとは言えない結果だった。

Z世代が最も日本の教育システムを評価

世代別にみると、Z世代が「良い」と回答した人が一番多く25%。最近まで教育を受けていたZ世代が、日本の教育システムを最も肯定的に評価していることがわかった。

日本の教育システムにおいて、「キャリアのための準備ができるか」「十分なリソース施設を備えているか」「社会的不平等の緩和に貢献しているか」「キャリアに備えた内容となっているか」についても、すべてZ世代が一番高く評価をしている。

5人に1人しか自国の教育システムを「良い」と評価していない日本の現状は厳しいが、なかでは最近まで教育を受けていたZ世代が最も肯定的に評価していることは多少なりとも救いだろうか。

それでは各世代は教育システムの課題は何だととらえているのだろうか? 明日はそのあたりを見てみよう。

(取材・文/大友康子)

特集|「海外の大学に行きたい!」と言われる日に向けた備え|体験談2 日本の高校資格(私立)が取れる高校からアメリカの私立大学に行ったケース 


Stanford University|航空宇宙工学専攻

K・Kさん
小5から中3までアメリカの現地校に通い、中2までは補習校にも通っていた。帰国後は、私立中高一貫校である広尾学園中学校・高等学校のインターナショナルコースに編入。

海外の大学までの道のり

高1で海外大学進学を考えはじめや。同時期に親に相談。

その後すぐに受験勉強を開始。SAT®も受けた。

高2でひたすら受験勉強を続け、英語力の底上げにも取り組んだ。

高3に入り、受ける大学を検討。この頃にTOEFL®を受けた。

高3の8月に奨学金の申し込みをして、9月に合格(受給決定は大学合格後)。

高3の12月に出願し、3月に合格。高校卒業年の8月にアメリカへ。現在、大学1年生。

合格の決め手は自主的な探求心と奨学金

K・Kさんがアメリカの大学に進学したのは、工学を深く学ぶため。

の大学の航空宇宙工学科に進むしかない』と思いました。僕はクラシックギターを弾いており、工学と音楽両方に取り組めるというカリキュラムにも惹かれました。もともと現地校での学びが性に合っていたこと、高校で同じコースに通っていた仲間のほぼ全員が海外大学進学希望だったこと。この2点も大きかったです。仲間が相談相手になってくれました。また広尾学園では授業の大半をネイティブの先生が教えていて、エッセイのチェックなどを頼むこともできました」(K・Kさん)。

受験では自身の積極性と資金準備が万全であることをアピールした。

「海外大学受験で求められるのは、『自主的な探求心』だと思います。志望する専門分野で、高校時代に課外活動などを通して知識量と応用力をいかに増やしたか、それをエッセイや面接などでどれだけ語れるかがカギとなります。また、資金準備も大切です。僕は公益財団法人柳井正財団の『公募制学校推薦海外大学奨学金(予約型)』を高3の9月に取っており、それも合格の一助になったように思います」(K・Kさん)

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「海外の大学に行きたい!」と言われる日に向けた備え

人生の少し先輩が勧める「高校時代にやっておくとよいこと」(後編)

昨日は、キャリア支援プログラムWillboostなどを提供する株式会社nucwatt(愛知県名古屋市)が、大学生から20・30代社会人の男女317人を対象に実施した「高校時代にやっておくとよいことに関する調査」をご紹介。1位は「好きなことを見つけて取り組む」で、2位「心から叶えたいと思う夢を持つ」、3位「友人や知り合いとの関係性を深める」が続いた。

「やっておくとよいこと」のランキング5位までは、各項の代表的な生の声も紹介されている。昨日から続き、4位と5位を見てみよう。

4位「具体的な目標を設定する」

  • 目標がなければ行動があいまいになって結果も出ない。自分は高校時代に勉強で明確な目標を立てて努力し結果を出す経験があって、それが社会にでてかなり活きている。(社会人30代・男性)
  • 理系の学部に進学したものの、その後弁護士になりたいと思ったことで、学部の勉強と法律の勉強の両方をする必要があり、労力もお金も大変だった。もっと早い段階で自分の人生をよく考えて目指すものを決めておけばよかったと思う。(社会人20代・男性)
  • 高校生の時に与えられたことだけこなす生き方をしていて、専門学校を卒業した後、結局色々中途半端でニートになった。もう一度高校生に戻れるなら、具体的に将来を見据えて目標を立てて何かに取り組む。(社会人20代・女性)
  • 親のいいなりやなんとなくで受験して失敗した。自分の時間を大切にするためにも、自分で調べて考えて目標を設定して取り組むことが大事。(大学院生・女性)

具体的な目標を設定することは、自分の行動に明確な指針をもたらし、努力が成果につながりやすくなる。そして、目標があることで、日々の選択や取り組むべき課題がはっきりし、計画的に行動できるため、結果的に目標達成への道筋が明確になるという意見が多くあった。

一方で、目標を持たずに漠然と過ごしたことで、行動が曖昧になり、後悔や挫折を経験してしまったという人もいた。早い段階で目標を設定し、それに向かって主体的に取り組むことが、将来の可能性を広げる大切なステップになりそうだ。

5位「部活に打ち込む」

  • 高校時代の部活が社会人になってからの話のネタになったり、人脈を広げるきっかけになっている。社会人になってからの楽しみの一つにもなっている。(社会人30代・男性)
  • 大学や社会人になってもサークルや同好会はあるが、最も夢中になれるのは高校の部活だと思う。やりすぎなくらいのめり込んでいいと思う。(社会人20代・女性)
  • 部活は強豪校でとても厳しく遊ぶ暇もなかったが、それによって忍耐力や強い精神力が身につき、それが社会人になっても活きている。辛い仕事でもへこたれずに頑張れている。(社会人30代・女性)
  • 部活をやるやらないは自由だが、部活で上下関係や人間関係を学んでいる人とそうでない人とでは、社会に出てからかなり大きな差になっていると感じる。思い出だけでなく人間形成においても大事。(社会人20代・女性)

高校時代に部活に打ち込むことは、単なる思い出作りにとどまらず、社会に出てからも多方面で役立つ重要な経験となる、という声が多くあった。また、部活を通じて培った忍耐力や精神力は、厳しい仕事を乗り越える力となり、上下関係や人間関係の学びは社会人生活でのコミュニケーションスキルやリーダーシップに繋がるという意見も。部活で得た仲間や経験は、社会人になってからの話題作りや人脈形成の土台となり、豊かな人間関係を築くうえでの大きな財産となるケースもあった。

好きなことや夢を基盤に置くことが、キャリア満足度を高める

アンケート結果に対し、調査を実施した株式会社nucwatt 代表取締役の野上琢磨(のがみ・たくま)氏は次のように考察する。

「本アンケート結果からわかるのは、大学生や社会人にとって『好きなことを見つけること』が非常に重要なテーマであり課題になっているということです。『好きなことを見つけて取り組む』が最も多く選ばれた理由は、単に楽しみを追求するだけではなく、好きなことが日々のモチベーションとなり、目標達成や成長の源泉となるからです。特に社会人にとっては、仕事が大きなウエイトを占める中で、自分の好きなことや夢を基盤に置くことが、キャリア満足度を高めるカギとなります。

また、『心から叶えたい夢を持つ』(92名)や『具体的な目標を設定する』(67名)といった項目も多く選ばれており、好きなことを見つけた後、その夢や目標に向かって着実に進むことが求められています。

多くの高校生にとって、高校生活の大部分は勉強と部活動です。目の前にある勉強と部活動に一生懸命取り組むことはもちろん大事なことですが、一度立ち止まって、自分の内面に目を向けて自己理解を深めることや、それを通して将来の夢や目標を考えることが大事です。

キャリア支援者や教育者は、単なる授業や部活の指導に限らず、個人が『好きなこと』や『夢』を軸に自分らしいキャリアを築くサポートを提供することが、彼らの長期的な幸福度を向上させるポイントと言えるでしょう」

Q,高校時代にやっておいた方がよかったと思うことは?

(取材・文/大友康子)

人生の少し先輩が勧める「高校時代にやっておくとよいこと」(前編)

大学生や20・30代社会人からのアドバイス

キャリア支援プログラムWillboostをはじめ大学生から社会人まで幅広くキャリア支援を展開している株式会社nucwatt(愛知県名古屋市)は、大学生から20・30代社会人の男女317人を対象に「高校時代にやっておくとよいことに関する調査」を実施し、このほど結果を発表した。

高校生の子どもに対し、自分の言葉で「やっておくとよいこと」を話せる親御さんもいるかもしれないが、筆者など、高校時代はあまりにも昔過ぎて、アドバイスなどまったく思いつかない。そんな方は、このアンケート結果を子どもとの話題に取り上げてみるといいかもしれない。今日と明日とで、詳しく見てみよう。

【「高校時代にやっておくとよいこと」調査概要】

調査対象 大学生、大学院生、20~30代社会人
調査期間 2024年9月29日~10月7日
調査方法 インタ―ネットによる任意回答
有効回答数 317人(女性212人/男性105人)
回答者の属性 大学生25人、大学院生7人、社会人(20代)67人、社会人(30代)216人
設問 高校時代にやっておいた方がよかったと思うことは?
回答方法 選択式(25個の選択肢の中から該当する上位3つを選択)

1位「好きなことを見つけて取り組む」

「高校時代にやっておくとよいこと」を聞いたところ、1位は「好きなことを見つけて取り組む」だった。寄せられた生の声は下記の通り。

  • 自分の時間を自由に使うことができる瞬間が一番多いのは学生のうちだと思う。少しでも好きだと思うことは思いっきり時間を使って取り組んでみた方がいい。(大学生・男性)
  • 少しでも興味を持ったことに取り組んでみると将来の仕事につながると思う。結局キャリアはこの連続だと思う。(社会人30代・女性)
  • 自分が夢中になれるものを何か一つでも見つけることができると高校生活が充実したものになると思う。(社会人20代・女性)
  • なぜ勉強するのか、どんな仕事に就くべきかについて、自分の好きなことに思いっきり取り組んだ後に考えると、とても有意義な答えが出ると思う。(社会人30代・男性)

高校時代に好きなことを見つけて取り組むことができると、高校生活が充実するだけでなく、将来の仕事やキャリアについて考えるうえでも大いに役立つという声が多数見受けられた。また、「自分の気持ちに目を向けて、好きなことをできるだけ早く見つけて取り組んでみる」、「少しでも興味を持ったらまずはやってみる」という精神がとても大事という声も多く見受けられた。

2位「心から叶えたいと思う夢を持つ」

  • 高校時代に将来のことを考えずに大学受験をしたものの、入学後に燃え尽き症候群みたいな感じになってしまった。就活でも自分の気持ちが分からないまま進めてしまい後悔している。(社会人30代・女性)
  • 高校の時に夢がなく、いつか何かやりたいことが出てくるだろうと思っていたが、結局見つからずに今は事務の仕事をしている。もっと早いうちにやりたいことや夢を見つけていたら人生変わっていたと思う。(社会人20代・女性)
  • 自分が本当にしたいことやなりたい自分がある人とそうでない人とでは、モチベーションに雲泥の差がある。(社会人30代・男性)
  • 高校生のうちになりたいものややりたい仕事を見つけないと、大学に入ってからも結局だらだらしてしまい、適当な就職するという流れになるケースが周りで多いと思う。(社会人20代・男性)

高校時代に「心から叶えたい夢」や「なりたい自分」を持つことが、その後の進路選択や職業選択において重要であることが見て取れる。夢があれば、学校での勉強や受験、進学後の活動のモチベーションが高まり、自分の目標に向けて努力しやすくなる一方で、夢や目標がないと結果的に燃え尽き症候群に陥ったり、やりたいことが見つからずに無気力なまま惰性で進路を選択してしまう可能性が高いことが分かる。

3位「友人や知り合いとの関係性を深める」

  • 社会人になると仕事や家庭、育児などで忙しくなって友人との時間が少なくなる。そんな中でも付き合い続けられる関係の友人がいると何かあった時に心強い。(社会人20代・女性)
  • 高校生活はその時にしか味わうことのできない青春。その時に色んなことを分かち合える友達がいると卒業した後も思い出として心に残ると思う。(大学生・男性)
  • 社会人になり本当の友達がいない人を目にします。良い関係の友達がいるだけで社会人になってから困難があっても乗り越えられたりするもの。(社会人30代・男性)
  • 私は恋愛を優先したあまり、高校で友達と十分に遊ぶことができずに今後悔している。高校時代に親友といえる深い関係性の友達ができると一生物だと思う。(社会人20代・女性)

高校時代に友人や知り合いとの関係性を深めることが、その後の人生で大きな支えになるという声が多くあった。青春時代の友情は、社会人になって忙しくなった時に心の支えとなり、困難な状況でも安心感や心強さを与えてくれるという人も。また、恋愛や勉強に偏りすぎず、友人と分かち合い深い絆を築くことが、卒業後も長く続く大切な財産となるという意見もあった。

自分の経験をもとに、高校生に向けて「やっておくとよいこと」を勧める生の声、リアリティがあり、説得力があり、ぜひ現役高校生に読んでほしいアドバイスの数々だと思う。生の声はランキング5位まで発表されている。明日も続きを見ていこう。

(取材・文/大友康子)