昨日に続き、ソニー生命保険株式会社(東京都千代田区)が行った「子どもの教育資金に関する調査」の結果を見てみよう。
大学卒業までに必要な教育費の予想額は、ここ数年の高止まりから一気に115万円の減少
各家庭では、子どものために非常に重要だと認識している教育費、小学生から大学を卒業するまでに必要な資金はどれくらいだと予想しているのだろうか。アンケートでは「1000万円~1400万円位」36.2%が最も多く、平均予想金額は1266万円だった。
平均予想金額を過去の調査結果と比較すると、2018年1348万円→2019年1339万円→2020年1381万円と増え続けていたのに対し、今回は1266万円。昨年から115万円の減少となった。その背景には、やはりコロナ禍における家計の悪化や教育資金としての備えの減少などが、親の意識に影響を与えていると思われる。
どのような経済状況になっても子どもが安心して教育を受けられるように!
昨日と今日とで抜粋して紹介してきたが、実際の調査は30項目前後と多岐にわたる。調査結果に対し、ソニーフィナンシャルホールディングス株式会社・金融市場調査部シニアエコノミストの渡辺浩志(わたなべ・ひろし)氏は次のように語る。
「今回は11都府県に緊急事態宣言が発令されている中での調査だったこともあり、コロナ禍の影が家計や教育環境に色濃く表れました。調査では、実に7割超の親がコロナ禍で『家計が悪化』し、『教育資金への不安が高まった』と回答しました。子どもの長い人生にとって教育は極めて重要であることは多くの親が強く認識しており、調査でも6割超が『老後の備えより子どもの教育費にお金を回したい』と考えています。それにもかかわらず、6割超の親が『教育資金としての備えが減少した』、5割半が『教育熱が低下した』と回答しています。コロナ禍による家計の悪化が、親の心のゆとりを奪ってしまっているようです。また、家庭の事情で、不幸にも就学を続けられなくなってしまった高校生や大学生の悲しい話も耳にします。
他方、コロナ禍による子どもの学力低下を心配する声も多く上がっています。その結果として、リモート授業に積極的な私立学校の受験熱が高まったり、学習塾などの学校外教育が存在感を増したりしているようです。コロナ禍の悪影響は家庭ごとにまちまちであるため、教育熱が低下した親もいれば、むしろ高まった親もいることでしょう。このような二極化は、教育機会の格差を生み、子どもの将来の職業や所得にも影響する恐れがあります。
しかし、子どもに罪はありません。どのような経済状況になっても子どもが安心して教育を受けられるよう、親としては十分な教育資金を計画的に準備してあげたいところです。ただし、小学生から社会人になるまでに必要な教育資金の平均予想金額は、一人あたり1266万円にも上ります。これに対して多くの家庭が銀行預金や学資保険を通じて、月平均1万4189円を進学費用の準備に充てていますが、備えとしてはまだ不十分であると思われます」
(取材・文/大友康子)