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大学を中退する理由は何?(前編)トップは「留年したから」

「大学に入ったからにはきちんと卒業してほしい」というのは親として当然の願いだが、日本では100人中7人が中退しているという現実がある(中央公論新社発行『大学の実力2019』より)。

そんななか、若年層向けの就職支援事業を展開する株式会社ジェイック(東京都千代田区)は、2019年度に大学中退者向けの就職支援サービス「セカンドカレッジ®」を利用した人を対象にしたアンケートを実施した。回答者248名、うち男性188名・女性60名。

留年の理由は、文系は学業以外に熱中、理系は授業についていけず

中退者のうちの文系対理系の割合は約6対4。中退者全体の55.6%が留年を経験しており、中退に至った理由の1位も「留年したから」であった。中退者のなかでの留年経験者の割合は、文系は約52.3%、理系は約63.2%と、理系のほうが多い。

中退者の留年経験

文理別留年経験者

また、留年の理由を詳しくみていくと、文系・理系で違いがあることが分かった。文系は「サークルや部活、バイト等に熱中したから」が51.5%で1位。理系は「授業についていけなかったから」が48%で1位となっている。

文理別留年理由

中退者の約半数が奨学金を借りていることが判明

同アンケートは中退者の奨学金受給の有無も調査。中退者のうち約半数が奨学金を受給していた。留年すると多くの場合、奨学金は停止されることからも、奨学金と中退には深い関係性があることが考えられる。

当サイトの閲覧者の方々は教育意識が高く、子どもに奨学金の心配をさせることはほとんどないだろう。だとすると、親としては子どもが大学中退せずにすむように、偏差値や就職率などにあまり惑わされず、子どもが本当に学びたいことを応援していくのがよさそうだ。

中退決断の前に、自分にとってどうすることが今後のキャリア、人生において良いか熟慮を!

中退者向けの就職支援を行う株式会社ジェイックのセカンドカレッジには、中退決断前に相談が寄せられることも多々あるという。そこで、セカンドカレッジ責任者の小久保(こくぼ)氏に中退の相談を受けた際の対応について伺った。

「私たちは、中退したことを後悔している人をたくさん見ています。だからこそ、彼らが自分自身にしっかりと向き合い、振り返ることが出来るように、話を聴いていきます。

まず、中退するかどうかを決めるのは私たち(ジェイック)ではないことを伝え、その上で、『中退したほうがいい』『中退しないほうがいい』という話をするのではなく、本人に寄り添い、自分にとってどうすることが今後のキャリア、人生において良いと考えるか、一緒に整理する時間にしようと伝えています。

一般的に、中退することのデメリットとして、就職が不利な場合がある、生涯賃金が大卒者より低め、奨学金の返還が始まるなどありますが、意外と多くの方が、中退することのデメリットを深く考えていない傾向があります。そのため、カウンセリングでは、中退することのメリット・デメリット、中退しないことのメリット・デメリットを本人に洗い出してもらい、この先自分がとる行動の結果を具体的にイメージすることで、今後の進路を自分自身でしっかり考えてもらいます。

中退理由の多くは、経済的理由や、授業についていけないなどがありますが、それらの共通点の一つとして、目的意識の希薄さがあげられます。例えば、大学に入学するのも『なんとなく』『親の希望』など、入学することがゴールになっていて、入学後に、なぜ自分はここにいるのか、なぜこれを学んでいるのかなど考えこんでしまう方も多数いるほど、自分で自分の道を選択できない若者が増えている傾向があります。

その状態で中退をしてしまうと、その後のキャリアを築くことも、そのためにどうすべきか考えることも難しいと思いがちで、就職を諦めてしまう若者が多くいるのです。

しかし、人生100年時代と言われる現代、一度の挫折で諦めず、チャレンジできる場はあります。そのためには、これまでの自身の壁を乗り越えていかないといけず、なぜ中退してしまったのか、同じ状況になった時にどうするかを、自分で選択できるような人になることが必要です。セカンドカレッジは、そんな風に、自走できる人になってもらうということを目指しています」

万が一、我が子が中退したいと言い出した時には、子どもへの寄り添い方として参考にしたい。

(取材・文/大友康子)