高校の文化祭にキャッシュレス化の波!金融教育の第一歩に?

キャッシュレス決済が文化祭にも普及しつつある
秋は文化祭のシーズン。日本の高校の多くで文化祭が開催されていますが、現役高校生はもちろんのこと、高校受験を控えた中学生とその保護者も学校見学を兼ねて訪れることも多いものです。研究や部活動の発表、模擬店、出し物など、昔から変わらぬ風景がある一方で、近年、大きく変化したのが、現金を使わずに支払いを行う「キャッシュレス決済」を使える高校が増えつつあることです。
※トップ画像を含む記事内の写真は、ドコモの「d払いキャッシュレス学園祭パッケージ」を導入した茨城県の水戸啓明高等学校の文化祭「仙湖祭」でのもの(2025年9月/ドコモ提供)
経済産業省によると、日本のキャッシュレス決済比率はここ15年で大きく上昇しています。2010年は13.2%、2020年は29.7%、2023年は39.3%、そして2024年は42.8%(141.0兆円)と、日本政府が目標としている「2025年までに4割程度にする」を達成。2024年の内訳をみると、クレジットカードが82.9%(116.9兆円)、デビットカードが3.1%(4.4兆円)、電子マネーが4.4%(6.2兆円)、コード決済が9.6%(13.5兆円)となっています。
(出典:経済産業省ウェブサイト※1)
こうした背景から、文化祭でもキャッシュレス決済のニーズが高まるのは自然の流れと言えるでしょう。ただ、高校生は未成年でクレジットカードを持てないので、キャッシュレス決済のなかでもQRコードやバーコードを読み込む「コード決済」が中心で、「PayPay」「楽天ペイ」「d払い」などの導入が進んでいます。
文化祭を機に高校生にコード決済を使ってもらうようにすることは、コード決済を展開している各社にとって若い世代の顧客を獲得するチャンスでもあります。一方、高校の先生や生徒側には、模擬店などでの現金管理の煩わしさがなくなり、現金の紛失や盗難防止にもつながるというメリットがあります。さらに、生徒たちにとっては、キャッシュレス決済とは何か、どういう仕組みなのか、など、お金について考えるきっかけにもなりそうです。
金融教育+キャリア教育を二本柱にするドコモ
実際に、「d払い」を運営しているNTTドコモでは、今年から学校を対象に「d払いキャッシュレス学園祭パッケージ」というサービスを開始しており、ただ学校に「d払い」を導入してもらうだけでなく、「金融教育」と「キャリア教育」も学んでもらえるようにしているといいます。具体的にどのような取り組みをしているのか、担当者に話を聞きました。
株式会社ドコモCS 茨城支店の佐藤翔太(さとう・しょうた)さんは、「今年、当パッケージ(※金融教育とキャリア教育を含む)を利用した初の事例として、茨城県の水戸啓明高等学校の文化祭を担当しました。準備段階では、最初に全校生徒に向けてキャッシュレス決済やd払いのチャージ方法をお話して、文化祭が近づいてきたら各クラスの代表生徒に“お店側”としての決済処理の仕方を2、3回に分けて説明しました。決済処理ができないなどのトラブルがないよう、電波状態のチェックも行いました。文化祭を終えて、先生や多くの生徒から『売上をウェブ上でリアルタイムに確認できて便利だった』という声が聞かれ、なかには『校内で移動販売をするときに、お金を入れる箱を持ち歩かなくてよいのが楽だった』と話してくれた生徒もいました」と言います。
ポイ活を体験、数ポイントでも嬉しい
また、金融教育の面では、「キャッシュレス決済で支払うとポイントが還元される、という仕組みを体験していただくことで、ポイ活や投資に関心を持つ入り口になるのではないか、と考えています。『現金で払うより、少しでもポイントがつくキャッシュレス決済で支払ったほうがいいと思った』と話してくれた生徒がいましたが、大人にとってはたかだか数ポイントかもしれませんが、お小遣いをやりくりしている高校生にとっては大きいですよね」と佐藤さん。
アンケートを通じた分析や企画などマーケティングの流れを体験
キャリア教育に関しては、学校ごとに内容は異なると前置きしたうえで、「水戸啓明高等学校の事例では、最初にアンケートをとってd払いの利用率を調べ、どうしたら利用者を増やせるのかを生徒たちと我々が一緒に考え、校内周遊施策を企画し、学園祭実施後には振り返りの時間を用意するといった、マーケティングの一連の流れを体験していただくコンテンツを提供しております。何回か高校に足を運んで生徒たちと顔見知りになると、いろいろな質問をしてくれるようになったので、やはりサポートするにあたっては生徒たちと良い関係を築いていくことが大事なんだと我々も勉強になりました」と佐藤さんは話します。
学校ごとに最適な学びの機会を提供していきたい
現在のところ、「d払いキャッシュレス学園祭パッケージ」内の金融教育・キャリア教育支援は、茨城・栃木・群馬・埼玉・新潟・長野に限定されていますが、「今後は全国に広げていきたい」と株式会社NTTドコモ ウォレットサービス部の千葉康平(ちば・こうへい)さんは期待を込めます。「d払いを使える仕組みの提供は以前から全国で行っていますが、金融教育やキャリア教育まで含めたサービスは始めたばかりで、試行錯誤しています。とはいえ、導入校からは良い反響をいただいているので、学校と長くおつきあいをしながら、その学校に合った導入の仕方や学びの機会を提供したいと思っています」
「ジュース100円」などと書かれた紙チケットが懐かしい反面、お釣りが足りない、売り上げ金額が合わない、といった問題が生じないスマートな決済方法が便利であることは間違いなく、文化祭のキャッシュレス化の波はさらに広がっていくと思われます。
(取材・文/中山恵子)
◆ドコモのキャッシュレス学園祭・概要
全国用の案内
https://service.smt.docomo.ne.jp/keitai_payment/corporation/schoolfestival
関信越用の案内https://service.smt.docomo.ne.jp/keitai_payment/corporation/schoolfestival/kse_special_package/
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