ワクチン接種とマスク着用、手洗い・うがいで感染防止につとめる
今シーズン(2019〜2020年)は11月4日~10日(第45週)の時点でインフルエンザが全国的な流行期に入ったと、国立感染症研究所が発表した。昨シーズン(2018-2019年)は第49週(12/3~9)、その前のシーズン(2017-2018年)は第47週(11/20~26)だったので、近年と比べて2週間~1か月ほど早くに全国規模になったといえる。検出されたウイルスの型は、2009年に新型インフルエンザとして大流行したAH1pdm09が全体の98%を占めていて、AH3亜型が1%、B型が1%だった。
インフルエンザの感染を防ぐには、「早めのワクチン接種」「マスクの着用」「手洗い・うがい」が大切だ。ワクチン接種には、ある程度の発症を抑える効果と、インフルエンザにかかってしまった場合でも重症化を防ぐ効果がある。接種回数は、日本の場合、13歳未満は2回接種、13歳以上は1回接種が基本だ。なお、最近、国内で、鼻に噴射して使うタイプのインフルエンザワクチン(経鼻ワクチン)が開発された。治験も終わり、国へ承認申請する方針とのことなので、近い将来、注射の痛みに耐えなくてもワクチンを受けられるかもしれない。現在、アメリカでは広く使われている経鼻ワクチンは生ワクチンだが、国内で開発された経鼻ワクチンは不活化ワクチンなので、生ワクチンに比べて副作用が少ないというメリットもある。
インフルエンザにかかってしまったら、「外出を控える」「安静にして十分な睡眠をとる」「水分をしっかりとる」「高熱が出たり呼吸が苦しいなどの症状があるときは医療機関を受診する」といった対処が必要だ。また、インフルエンザ治療薬には、発症から早い段階で使うことで重症化を防ぐ効果がある。使うか使わないかは、発症してからの時間や病状、持病の有無などを考慮して医師が判断する。
インフルエンザに伴う異常行動は、10歳、男性に多い傾向
インフルエンザ治療薬を用いる場合、「異常行動」のニュースが気になる人もいるだろう。過去には、治療薬を服用した子どもが異常行動によって転落死した事故も起きている。厚生労働省の研究班によると、昨シーズン、インフルエンザを発症して治療薬を服用した後に、突然走り出したり、高いところから飛び降りたりするといった異常行動を起こした例は72件あり、性別では男性が71%、女性が29%、年齢では10歳が最も多かった。
治療薬別に異常行動の発生件数も調査しているが、治療薬を使っていなくても異常行動が起きたケースもあり、治療薬の使用や種類と異常行動については、「特定の関係に限られるものではないと考えられた」と報告されている。
前述のような重大な事故を防ぐには、子どもがインフルエンザにかかったら、治療薬を使っても使っていなくても、経過や異常行動の兆候に注意をはらうことが大切だ。特に治療薬を使った場合は、少なくとも発熱から2日間は高熱が出ているときに一人にさせない、部屋の窓の鍵をかけておく、などの対策をしておきたい。
(文/中山恵子)