山口もえ インタビュー|人の子として親として

周りの人の気持ちをふわっと包み込むような、いつも柔らかい雰囲気が素敵な山口もえさん。子どもの頃はとてもシャイで、人前に出るのが大の苦手だったとか。
けれど、「人生の岐路に立ったときこそ前を向く」という思いを胸に、テレビやラジオでの活躍を重ね、現在は、爆笑問題の田中裕二さんとともに、3人のお子さんを育てていらっしゃいます。
「愛情をたっぷり伝える、見守り、信じて。母として優しさと強さを兼ね備えた、山口さん流子育て術は、参考になることばかりです。
マイナスなときこそ「これから」を楽しむピンチはチャンス!
子供のころは恥ずかしがり屋さん将来の夢は「プロのバレリーナ」
―――山口さんは幼少期、どのようなお子さんでしたか?
山口もえさん(以下、山口) 恥ずかしがり屋で母の後ろにいつも隠れているような子でした。ひと屋で母の後ろにいつも隠れているような子でした。人前に出ることが苦手で、小学校の学芸会では“木”の役を選んだりしていたんですよ(笑)。それから誰かのために何かをすることに喜びを感じる子でもありました。

小学生時代。「人を喜ばせるのが好きで、バレンタインのときに、クラス全員の男子にチョコレートをあげたことが。そしたら『もらえない』と思っていた子のお母さんから、わざわざお礼を言われました(笑)」
―――具体的には?
山口 母に対して特にそういう気持ちを抱くことが多かったです。たとえば母に膝の上に座るとき、母が痛い思いをしないように少し動いて調整したり。母がどこかにお出かけするときは、お守りを作って渡すような子でした。
―――ご両親からの教育で印象に残っていることを教えてください。
山口 父はそこにいてくれるだけで安心する、一家の大黒柱という感じで、姉、私、妹へのしつけは厳しい方だったと思います。たとえばお箸の持ち方や礼儀作法など。ただ、私たちが興味をもつことに対しては父も母も応援してくれて、習い事に挑戦するときもいつも賛成してくれました。私は水泳、ピアノ、書道、クラシックバレエを習っていて、バレエには特に夢中で取り組んでいました。
―――将来はプロのバレリーナを目指していたこともあるとか。
山口 そうなんです。7歳から16歳まで、「バレエのために生きている」と言っていいほど本気で頑張っていました。でも思春期に入って、ぴっちりのタイツを着た男性と踊ることに抵抗を感じて……。バレエはやめてヒップホップのダンス教室に行こうと門をたたいたら、そこは芸能事務所でした(笑)。それで、一緒について来てくれた母と帰ろうとしたら、事務所の社長がたまたまいらして、「ダンスに興味があるなら、ダンスだけしてくれていいんですよ」と言ってくださったんです。なので、最初はダンスレッスンだけを受けていました。
―――今のご活躍の背景にそのようなエピソードがあったのですね
山口 そう、笑っちゃいますよね。人生はどこでどうなるかわからなくて、面白いです。しばらくはダンスだけをやっていましたが、同じ練習生がドラマやCMに出る様子を見て楽しそうだなと思って。私もオーディションを受けてみたんです。それで最初に出演したのがお味噌のCM。撮影の帰りに、赤味噌、白味噌、合わせ味噌、豆乳のお土産をいただいて、家に持ち帰ったら家族がすごく喜んでくれました。「何ていい仕事なの?」と思ったのをきっかけに今もこの世界にいます(笑)。
「滑舌が悪いね」と言われて仕事をやめようかと…
―――デビュー後はお仕事は順調に進んだのですか?
山口 いえ、そうでもなくて。20歳前後のころは、年齢にふさわしい役が少なくてオーディションに落ちまくりました。当時は大学生で、友達は就職活動をしているのに私は何をしているのだろうと悩みました。
しかもその頃、周囲から「滑舌が悪いね」と言われ始めたんです。そう思ったことがなかったので驚いたし、自分を全否定された気持ちになってこの仕事は向いてない、辞めようと思って社長に話をしに行きました。。
―――その後の展開が気になります。
山口 社長は「滑舌が良くなったらもえがもえではなくなる。だからそのままでいいんだよ。」と励ましてくださいました。その言葉に救われて、もう一度頑張ろうと思ったんです。それに母も「マイナスなときこそこれからが楽しみじゃない?ピンチはチャンスよ」と背中を押してくれて。私はとても心配性で、石橋を叩いて叩いて、そのうえで割っちゃうタイプ。そういう私を安心させたかったのでしょうね。
―――お母様の優しさも、山口さんの支えになったのですね。
山口 そうなんです。そうしたら、ほどなくして
ドラッグストアのCMへの出演が決まったんです。実は同じCMのオーディションを一年前に受けたときは不合格でした。内容が「ウエディングドレス姿で歌を歌いながらスキップをする」というもので、私は歌が苦手で、しかもスキップを同時にできなかったのですが、やれるだけの状態で堂々と歌いました(笑)。そのおかしな様子を監督さんが覚えていて、一年後に、「あの子をもう一回見たい」と言ってくださったことから起用されたんです。あのとき全力で挑戦した自分を褒めてあげたいですし、人生に無駄なことなんてないのだなと思います。
子供たちを信じているから「見守る」を心がける
―――山口さんは17歳の女の子、13歳の男の子、7歳の女の子のママでいらっしゃいます。子育てで心がけていることを教えてください。
山口 両親が私に対してそうだったように、私も子どもたちを見守るようにしています。ただ、それって勇気が必要なんですよね。子どもを信じていないとできないですから。私は子どもたちを信じているので、何かをやってみたいといわれたら、なるべく勧めています。そして、やりたいことが無いのであれば、「それはそれでいいんだよ」とも伝えています。あなたはあなたのままでいい。何者にもならなくていい。生まれてきてくれてありがとう、と。
子どもに伝えているのは「あなたのままでいい。生まれてきてくれてありがとう。」
―――素敵なメッセージですね。
山口 子どもたちは、学校も習い事も頑張って行っています。部活もあるともっと忙しいです。そういう姿を見ると、そのままで十分だよと思うんです。そして家では本当にリラックスしていてほしい。そのうえで、これが好き、こういうことをしていると幸せというものをいっぱい持っておくと、人生はさらに楽しめると思います。
―――「生まれてきてくれてありがとう」という言葉を口にするのは照れくさい気もしますがお子さんに直接伝えているのですか?
山口 そうです。ただ、おもしろいのは、ひとりの子にその言葉を伝えたあとに、隣にいる子にも同じことをすると、「そっちにも言うんか―い!」という反応をされるんです(笑)。「自分だけかと思ったら、みんなにも言ってるんだ」という感じで。子どもは何歳になっても愛情をたっぷり欲しいんですね。なので、私とふたりだけの時には、それぞれに「大好き」を伝えるようにしています。
―――上のふたりのお子さんは高校生と中学生。この時期ならではの子育ての難しさは感じませんか?
山口 そうですね。娘はそういうことはないのですが、中学生の息子は、私に「うるせぇ」と口答えをしたことがあるんです。それに対して「え、今なんて言った?」と返したら、ぼそっと「うるせぇって言ったけど……、思春期だから……」と。かわいいですよね。息子は小学五年生の時に、こう話してくれたことがあるんです。手をつないで歩いていた時、私が、「今はママと手をつないでくれるけどそのうち『うるせーババア』とかいうんだろうなあ」と口にしたところ、息子は本気で「僕はママにそんなこと言わない!」と。でも、中2で言いましたね(笑)。ちゃんと成長している過程だと思って見守っています。

夫の田中さんと子どもたちが芋堀りを楽しむ様子。「3人の子の出席番号が覚えられません(笑)。夫が見兼ねて、誰々は何番というメモを作ってくれました」
家族みんなをハッピーにするため、まずは自分自身をハッピーに!
最近始めた、ひとり旅その日は自分自身に集中
―――年齢差のあるお子さんたちのお世話は大変ではないですか?
山口 年が離れている分、長女と長男は下の子の面倒をよく見てくれますし、お風呂は、最後に入った人が掃除する決まりがあったり。みんなで協力し合っています。とはいっても、昨日までは、子育て、家事、仕事で手一杯になって子供に優しくなれないこともあったんです。それで「これはよくない!」と。自分が喜ぶことをしないとみんなもハッピーじゃないと気づいて、最近は、時間があるとひとりで日帰り旅行をしたり。自分の時間も楽しんでいます。
―――爆笑問題の田中裕二さんは、家ではどういうパパですか?
山口 子どもの良さを、私とは違う角度から見てくれます。家族が大好きで、家族がうまく回るにはどうすればいいかを考えてくれています。また、息子は、夫の好きな野球やスターウォーズにそのまま夢中になっていて、夫が息子に与えてる影響は大きいです。みんなにとって大切な存在です。
―――最後に海外に住む読者の方々へメッセージをお願いします。
山口 私は東京生まれの東京育ちで、日本を離れて暮らしたことがないんです。なので、海外に行くチャンスがあるなら、ぜひ行ってみたい。つらいこともあるでしょうけど、月日が経てば「あのとき大変だったね」と家族で笑える経験になると思います。ピンチはチャンスです。満喫してほしいです!
山口もえさんの一問一答×10
好きな言葉は?
一期一会
嫌いな言葉は?
ありません
どんなときにウキウキする?
旅行の準備をしているとき
どんなときにげんなりする?
洗濯でティッシュを一緒に洗ったとき
好きな食べ物は?
フルーツ全部
嫌いな食べ物は?
脂っこいものやゲテモノ
朝起きていつもすることは?
お弁当を3つ作る
寝る前にいつもすることは?
7歳の娘をギューッと抱きしめて、「生まれてきてくれてありがとう」と言う
マイブームは?
ひとり旅
生まれ変わったら何になりたい?
鳥! 飛んで、美味しい果物を食べに行きたい
プロフィール

やまぐち もえ
1977年6月11日生まれ。東京都出身。1999年、ドラッグストアのマツモトキヨシのCM出演が注目を浴び、以降、バラエティ番組を中心に活躍。現在は、テレビ番組『スイッチ!』(東海テレビ)に隔週火曜レギュラー、NHKラジオ 第1 『ふんわり』に月曜レギュラーとして出演中。また、野菜ソムリエプロ資格取得者でもあり、著書に『山口もえのお野菜たっぷり!親子ごはん』(祥伝社)がある。2015年には、お笑い芸人の爆笑問題の田中裕二氏と結婚。一男二女の母。