2020年卒業予定者の採用面接が6月1日に正式に解禁されてから、もうすぐ2カ月が経とうしている。就職採用戦線は大きな山を越えたが、学生たちの就職活動の状況はどのようになっているのだろうか。
7月1日時点の就職活動終了者は全体の72.0%
就職情報サイト『キャリタス就活』を運営する『株式会社ディスコ』(本社:東京都文京区)が発表した「7月1日時点の就職活動調査」の結果によると、7月1日現在の学生モニターの内定率は84.0%。先月調査(6月1日現在)の71.1%から1カ月で12.9ポイント伸び、3年連続で8割を超える高水準となった。これは、前年同期実績の81.1%を2.9ポイント上回る数字。人手不足が深刻さを増す中、就職環境は昨年よりも売り手市場の傾向が強まっている。7月の内定率が84%台をマークするのは、リーマン・ショック前の2008年卒者以来のことだ。
内定取得学生のうち、就職先を決め手就職活動を終了したのは80.6%。6月調査では54.6%だったので、この1カ月で大きく増えたことが分かる。
7月1日現在の内定状況
※「内定」には内々定を含む、単位は%
全体 | 文系男子 | 文系女子 | 理系男子 | 理系女子 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
内定あり | 84.0 (81.1) |
76.9 (78.3) |
88.0 (81.5) |
84.6 (82.4) |
91.7 (83.6) |
|
内定なし | 16.0 (18.9) |
23.1 (21.7) |
12.0 (18.5) |
15.4 (17.6) |
8.3 (16.4) |
|
内定者のうち | 就職先を決定し活動終了 | 80.6 (78.2) |
76.6 (77.5) |
77.4 (72.5) |
88.3 (82.2) |
83.2 (83.5) |
活動は終了したが複数内定保持 | 4.2 (5.3) |
5.1 (6.2) |
5.7 (5.6) |
2.7 (4.0) |
2.1 (5.3) |
|
進学などの理由で就職活動を中止 | 0.8 (0.6) |
0.6 (0.0) |
0.3 (0.4) |
1.5 (1.6) |
1.4 (0.8) |
|
就職活動継続 | 14.3 (15.9) |
17.7 (16.4) |
16.7 (21.6) |
7.6 (12.3) |
13.3 (10.5) |
※( )内は前年(7月1日現在)の数値
モニター学生全体を分母にとると、調査時点で就職先を決定して活動を終了した者の割合は67.7%。複数内定を保留しているなど未決定である者(4.3%)を合わせると、終了者は72.0%になる。これは前年同期(68.2%)よりも3.8ポイント高い数字で、終了のペースがさらに早まったことがうかがえる。その分、継続者の割合は減少。活動継続者は「内定あり」(12.0%)、「内定なし」(16.0%)を合わせた28.0%にとどまった。なお、文理別に見た継続者の割合は文系31.9%、理系21.3%で、文系の方が10ポイント以上多い。
就職戦線は、大手企業の夏採用や中堅中小企業を主軸に第2ラウンドへと移っている。
7月1日現在の内定状況
※「内定」には内々定を含む、単位は社
全体 | 文系男子 | 文系女子 | 理系男子 | 理系女子 | |
---|---|---|---|---|---|
内定社数/平均 | 2.2 (2.3) |
2.3 (2.3) |
2.3 (2.3) |
2.0 (2.2) |
2.0 (2.3) |
※( )内は前年(7月1日現在)の数値
また、7月1日現在の就職活動量については、これまでの1人あたりのエントリー社数の平均は29.7社で、6月調査(28.5社)から1.2社微増。3月調査時点(23.1社)では前年同期(22.4社)をやや上回っていたものの、その後あまり伸びることはなく、7月時点でも前年(30.7社)を1社下回る。企業セミナーへの参加社数も前年実績を割り込んでおり、平均11.8社と前年を2社下回った。一方でエントリーシート提出社数は14.1社、筆記試験10.2社、面接試験7.8社と、いずれも前年同期と同水準を保持。企業を厳選してエントリーしていたため、実際の受験企業数が減ることはなかったと考えられる。志望企業を絞り込んでエントリーする傾向は、今年に入って一層強まったと言えそうだ。
動画選考やWEB面接を導入する企業が増加中
時代の流れを受けてか、採用選考に動画やWEBを用いる企業も増えてきているようだ。
自己PR動画(1分程度で自己PRなどを録画し、提出するもの)や録画面接(PCやスマートフォンで、あらかじめ設定された質問にオンデマンドで答えるもの)、WEB面接(インターネット経由で実施するライブ面接、オン来面接、双方向のもの)について経験を尋ねたところ、「自己PR動画」の提出を求められた就活生は約3割(31.3%)で、実際に応じた学生は23.2%、「録画面接」は、求められた経験、受験した経験ともに1割台(それぞれ16.4%、13.6%)、「WEB面接」は2割前後だった(22.8%、19.7%)。
未経験者含め、それぞれについて賛否を尋ねたところ、「自己PR動画」「録画面接」は「賛成」が3割程度にとどまった。一方、WEB面接は「賛成」の合計が約6割(59.7%)に上り、地方学生を中心に、時間や交通費を節約できることにメリットを感じる声が多く寄せられた。採用選考に動画やWEBを用いることへの考えについては下記のとおり(一部抜粋)。
- 動画でなら、文字だけでは伝わらない雰囲気など様々なことを伝えることができると思う(理系男子)
- 一次面接ではどの企業でも同じような質問をされるのに、移動時間を加味してスケジュールを組んだり、会場に足を運んだりするのが大変だったので、WEBでできるとありがたい(文系女子)
- 自己PR動画は、志望度が高くなければやらないほど面倒なので、スクリーニングになると思う(文系男子)
- 動画やWEB上で選考を行うことで、遠方の企業へのエントリーも気軽に行うことができる(理系男子)
賛否はあるが、今後もこうした選考方法を導入する企業は増えていきそうだ。
(取材・文/松井さおり)