新入社員の初任給は昨年比8999円アップ

ある大企業の新入社員の初任給は、昨年比10万円アップ!
新年度のスタートからひと月、新入社員たちは社会人生活に慣れてきた頃でしょうか。
そんな新入社員たちの給料、企業によっては大幅にアップしたことがニュース等で伝えられてきました。例えば、大和ハウス工業は一律10万円引き上げで、大卒の初任給は35万円。三井住友銀行も大卒の初任給を25万5000円から30万円に引き上げました。既存社員の給料との逆転現象が生じないよう、ベースアップで調整しているようです。
そんなふうに5万、10万とアップした大企業はうらやましい限りですが、中小企業を含めた一般企業全体では、今年は初任給はどのくらいアップしたのでしょうか? そのあたりが分かる、株式会社マイナビ(東京都千代田区)の「マイナビ2026年卒 企業新卒採用予定調査」を見てみましょう。
【調査概要】「マイナビ 2026年卒 企業新卒採用予定調査」
・調査期間:2025年1月27日(月)~2月9日(日)
・調査方法:
①採用・育成・組織戦略の課題に寄り添うマイナビ運営の情報メディア「HUMAN CAPITALサポネット」会員にメールマガジンにて案内
②マイナビ2026利用企業担当者宛にメールマガジンにて案内
・調査機関:株式会社マイナビ
・有効回答数:1820社(上場139社 ・ 非上場 1,681社|製造 737社 ・非製造1,083社)
※調査結果は、端数四捨五入の都合により合計が100%にならない場合があります。
給与が低いと、新卒採用は「厳しくなる」
まず、企業に新卒全体の採用環境の見通しについて尋ねると、「厳しくなる」と回答した企業は78.1%(「非常に厳しくなる」+「厳しくなる」)となりました。前年(76.6%)以上に、採用に苦戦すると考える企業が増えています。
「自社の新卒採用が厳しくなっている要因」について聞くと、「新卒学生全体の数が減っていること(67.7%)」が前年同様に最多。
また、増加幅が最も大きいのは、「給与が低いこと(業界平均などと比較して)(28.9%)」で、前年比で4.1pt増加しました。昨今の賃上げ・初任給引き上げの機運により、給与や待遇面で他社に対して引けを取ると感じる企業が増えているようです。


初任給平均アップ額、上場企業1万4256円、非上場8793円
初任給(学卒生・支給額)の平均額は26年卒全体で萬22万5786円となり、25年卒の平均額と比べて8999円増加しました。内訳をみると、上場企業で1万4256円、非上場企業で8793円の増加。大和ハウス工業のような高額アップでないにしても、全体的に初任給を上げた企業が多かったようです。

初任給引き上げの理由は「求職者へのアピール」
そこで、初任給引き上げの理由を尋ねると、最も多かったのは「求職者へのアピールのため(57.1%)」。初任給や賃金に対する世間や学生の関心の高さを受け、初任給引き上げを行っていることがわかります。

住宅手当や諸手当、休暇制度などがアピールポイント
もちろん、初任給の引き上げ以外に待遇面で学生にアピールできることもあるはずです。初任給の引き上げ以外に待遇面で学生にアピールしていることを聞いたところ、最も多かったのは「住宅手当や借り上げ社宅(46.4%)」。そのほか「諸手当(営業手当、資格者手当など)」、「休暇制度」などとなりました。
上位ではないものの、「奨学金返済補助・代理返済(12%)」もありました。実は、奨学金返済支援制度は法人税の控除があるなど企業側にもメリットがあるのです。

「有給取得で1万円支給」などユニークな第3の賃上げ
そのほかユニークな福利厚生や取り組みについて自由回答で聞いた回答が下記の表。「有給休暇を1日取得すると1万円支給」や「内定者懇親会で実際の給与明細を見せながらリアルな暮らしやキャッシュフローの紹介している」などが寄せられました。
また、実質的に従業員の手取り額を増額させることは「第3の賃上げ」などと称されることがありますが、「iDeCo手当を新設予定」は、その一例といえでしょう。

引き続き売り手市場で、賃上げの機運が高まる
マイナビキャリアリサーチラボ研究員・長谷川洋介氏は調査結果を統括し、次のように述べます。
「採用充足率が過去最低となった25年卒の実績などを受け、26年卒の採用活動についても『非常に厳しくなる』と感じる企業が増加し、引き続き売り手市場の状況を呈しています。賃上げの機運が高まるなか初任給を引き上げる企業も増加し、また引き上げの動きが上場企業以外にも波及し始めています。
一方で、福利厚生を活用することで社員の手取りを実質的に増額させる“第3の賃上げ”の動きも見られるなど、学生が感じる経済状況や将来の見通しへの不安を軽減・解消するために企業がさまざまな取り組みを行っていることもうかがえます」
休んでお金ももらえる「有給休暇を1日取得すると1日1万円支給」など、ユニークな“第3の賃上げ”は、社員にとってなかなかうれしいことではないでしょうか。筆者の子どもは、ちょうどこの4月から就職しました。子どもの給与に口を出すつもりはありませんが、ユニークな福利厚生の有無についてはちょっと聞いてみたいものです。
(取材・文/大友康子)