進学先の教育に慣れておけるダブルディプロマ
日本から海外大学に進学する代表的なルートとして最後となる4つ目は、ダブルディプロマ資格や推薦を得られる高校から行くケースだ。ダブルディプロマ[用語①]とは、日本の高校の卒業資格を得ると同時に、 海外(その高校が提携している州な ど)の高校の卒業資格も取得できるプログラム。このプログラムで学ぶことにより、海外大学進学の際は、海外の高校卒業資格を持つ者として、日本の高校卒業資格のみを持つ者が 課せられるIELTSR®やTOEFL® といった英語の試験で高得点を取ったり、ファウンデーションコース[用語②] に入ったりすることなく進学する道が開ける。
「進学枠でのメリットが大きいほか、ディプロマを取得した国や州の大学へ実際に進学した際には、すでにそこの教育に慣れているため、ギャップを感じることなく学ぶこともできるでしょう。ただし日本国内でダブルディプロマを取得できる学校はまだ多くはないため、その一部の学校を、高校進学時点、高校入試のない中高一貫校なら中学進学時点で目指す必要も出てきます」(YGC)。
このほか、日本国内の大学を目指す場合に、帰国生枠が使えるのもメリットとなる。
協定先の海外大学に出願できる推薦制度も
海外協定校への推薦入学も、注目したい進学ルート。代表的なのはUPAA(University Partnerships for Alternative Admissions、海外協定大学推薦制度)とUPAS(University Pathway Admission Service、海外大学進学協定校推薦入試制度)で、 どちらでもスムーズな海外大学への進学が可能。UPAAかUPASに加盟している高校で学び、協定先の海外大学から行きたい学校を選んで出願する。協定先には例えばUPAAなら、マンチェスター大学(イギリス)、シドニー大学(オーストラリア)、イリノイ大学シカゴ校(アメリカ)などがある。
「2制度とも、必要な書類が簡素化されているなど海外大学出願へのハードルが低くて、合否判定に要する期間も2~4週間と短く、英語力がそれほど高くなくても合格を勝ち取ることができるため、日本国内の大学との併願もしやすいです。学校によっては審査にSAT®やエッセイが不要なケースや奨学金がもらえるケースもあります」(YGC)。
出願手続きや入学手続きを事務局などにサポートしてもらえるのも、 本人だけではなく保護者にとっても嬉しいところ。進学する際は、場合によっては渡航するまでに、進学先の授業についていけるだけの英語力をつけておく必要がある。トップスクールであればTOEFL iBT® 100 点以上が目安になる。
用語解説
用語①:ダブルディプロマ
「デュアルディプロマ」とも呼ばれる。日本国内の高校に通いながら直接またはオンラインで海外の高校の授業も履修し、同時に卒業することで2つの国の卒業資格を得るプログラム。日本国内の大学には帰国生入試による進学が可能となり、同時に海外大学にも出願可能となる。例えばUSダブルディプロマプログラムを提供するPCDグローバルキャンパ ス JAAC校では、アメリカ(PCD) の高校卒業資格を取得可能。一定の成績基準を満たす卒業生はIELTS®、TOEFL®、SAT®、ACTなどの得点を提出することなく、パートナーシッ プを締結している海外30大学(アメリカ18大学、カナダ5大学、イギリス3大学、オーストラリア3大学、 ドバイ1大学)への100%推薦合格が認められる。また、給付型奨学金制度(授業料最大60%免除)の参加資格を得ることもできる。
用語②:ファウンデーションコース
大学で学ぶ下準備をするコース。約1年間で、必要な英語力や専攻分野の基礎知識を身に付ける。イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどの大学で開講されている。
お話を伺った方
Y-SAPIX Global Campus(YGC)
北米の高校・大学への進学をサポートする学習塾。「論理的思考力の育成」「対話力の向上」「自国の文化・社会と世界の多様性の理解」の3つを教育方針として掲げ、All English授業を行っている。生徒の海外大学合格実績は多数。
取材・文/本誌編集部・庭野真実 イラスト/佐伯ゆう子