Press "Enter" to skip to content

特集|「海外の大学に行きたい!」と言われる日に向けた備え|②日本の高卒資格のみ取れる高校(私立)から行く場合

情報収集も対策もスムーズに進む傾向に

2つ目は、高校卒業時に取れる資格が「日本の高卒資格のみ」でも、私立の難関校や国際的な学科やコースを有する学校の場合だ。この場合は、海外大学への準備や対策がスムーズに進むことがある。実際、毎年多くの海外大学合格者を輩出する学校では、複数校のアドミッション担当者が来日して説明会を開催したケースも。一部の難関校の場合は海外大学を目指す生徒が一定数おり、学校側もそのニーズに合わせて海外大学進学に詳しい先生を配置したり、海外大学進学相談室を設けたり、コンスタントに説明会を開いたりする。

「英語力に関しては、帰国生の取り 出し授業や習熟度別の指導を取り入 れていたり、放課後や土曜日の特別講座としてTOEFL®やSAT®対策授業を開講したりしているケースも あります。さらに『模擬国連[用語①]、 ディベート部[用語②]の活動に取り 組みやすい』というメリットも。何度も出場している学校では経験者である先輩の話を聞く機会が豊富ですし、学校全体で取り組んで大会での優勝を目指そうといった機運も高まっているためです。そして、これま での卒業生が得た奨学金[用語③]も 多岐に渡るため、現実的な奨学金の情報も得やすいでしょう」(YGC)。

APは特にアメリカの大学進学時に価値増大

アメリカの大学進学を希望する場合はAP[用語④]を取ると有利に働くが、APを提供する学校自体がごく一部の学校に限られる(ほかはインターナショナルスクールと通信教育)。そのため、どうしてもAPを取りたい場合は高校進学時点、高校入試のない中高一貫校なら中学進学時点で、その“ごく一部”を目指す必要も出てくるだろう。

「大学レベルの授業も提供しているAPで好成績を修めたという結果は、大学進学において大きな価値を持ちます。特にアメリカの大学であれば、学業成績だけでなく、どんなレベルの授業を履修したかも重要視されます。またAPで取得した単位は、場合によっては入学後に大学の単位として認められることもあります。ただ、前述の通り日本にはAPを取れる学校自体が少ないため、極端にAPにこだわる必要はないかもしれません」(YGC)。

国内大学と併願するなら勉強は高2に終わりまで

日本国内の大学と併願する場合は、その意志を持った時点で学校の先生や進学カウンセラーに相談をして、勉強を早め早めに進めていく必要がある。

「国内受験のための勉強は、高校2年生が終了するまでにある程度まで 終わらせておくのがベストでしょう。 英語では高校2年生が終了するまで にTOEFL® 100点(受検者の上位20%程度)を取っておくと、国内の トップ大学を目指す場合でも、英語 の入試問題で苦労することは少なく なります」(YGC)

用語解説

用語①:模擬国連
実際の国連での会議を模する活動。参加者が各国の大使(外交官)の役を担い、その視点から、議題に関する事前リサーチを行ったり政策を立案したり意見を述べたりする。

用語②:ディベート部
ある議題について賛成側と反対側に分かれて討論を行う部活動。英語ディベート部を擁する学校も。

用語③:奨学金
主に返済不要の「給付奨学金」と卒業後に返済が必要な「貸与奨学金」がある。前者の代表例は、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の海外留学支援制度(学部各位取得型)。資格要件は2024年度の場合、「(留学先大学での主たる使用言語が英語である場合)応募時までに受験した英語能力試験の得点で、TOEFL iBT®の 得点が80点、またはIELTS®6.0以上 の水準を満たす」など、18項目。奨学金の月額は12~32万円程度で、留学先により異なる。2023年度の採用人数は78名。このほか、「柳井正 財団 海外奨学金プログラム」「笹川 平和財団スカラシップ」なども給付奨学金となっている。

用語④:AP
Advanced Placementの略。高校 在学中に履修できる大学レベルの授業のこと。アメリカとカナダの高校に加え、ヨーロッパやアジアの一部の高校で採用されており、高校生の段階から各科目の専門性を高めることができる。科目数は38あり、分野 は英語、歴史、科学、数学、外国語、 芸術など。AP試験の最高スコアは5で、3以上のスコアを取ると大学 に単位として認められることが多い。

お話を伺った方

Y-SAPIX Global Campus
北米の高校・大学への進学をサポートする学習塾。「論理的思考力の育成」「対話力の向上」「自国の文化・社会と世界の多様性の理解」の3つを教育方針として掲げ、All English授業を行っている。生徒の海外大学合格実績は多数。

取材・文/本誌編集部・庭野真実 イラスト/佐伯ゆう子

【関連記事】

「海外の大学に行きたい!」と言われる日に向けた備え