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就活・採用川柳ににじむ苦悩、おかしみ(後編)

「2025年採用川柳・短歌」をチェック

昨日は調査機関「HR総研」が新卒就活生向けクチコミサイト「就活会議」と共催で募集し、入選作を発表した「2025年卒 就活川柳・短歌」をチェックした。本日は採用担当者を対象にした「2025年採用川柳・短歌」の最優秀作、優秀作3作品、佳作9作品を見てみよう。

【2025年卒 採用川柳・短歌】 https://hr-souken.jp/senryu2025/

主催 HR総研(ProFuture株式会社)、「就活会議」(就活会議株式会社)
募集期間 2024年6月19日~7月1日
応募資格 2025年卒採用を実施した企業の採用担当者
応募数 62作品
入選作品 13作品

学生の志望動機に少々がっかり

最優秀賞作「ITの 広い世界に 羽ばたきたい 志望動機は 在宅勤務」(神奈川県 賽の河原の採用担当さん)
優秀作「耳につく 志望動機は みな同じ AI聞いても また同じ」(熊本県 ひろしですさん)

「ITの広い世界に羽ばたきたい」という希望は前向きで良い。しかし、それはなぜかと問えば、「在宅勤務」がしたいからとのこと。一種の消極性を感じざる得えず、採用担当者の少々がっかりした気持ちがにじむ。

優秀作はAIが登場する現代の就職活動に対する皮肉とも受け取れる川柳だ。昨夏の記事「現役大学生は生成AIを就活に使用するつもり?(前編)(後編)」では、約4割の学生が就活にAIを使用するつもりがあることを紹介した。みんながみなAIで志望動機を拵えたわけでもないだろうし、実際に志望動機がほぼ同一だったわけでもないだろうが、独自性や創造性がより重要視される一方で、模倣と真摯な意欲の区別が模索される時代をうまく捉えている。

採用担当者も苦労し、悩んでいる

優秀作「まだ採れぬ ハードル下げて また下げて いっそ自身の 転職よぎり」(東京都 総務部長さん)
優秀作「キャリアプラン 質問しつつ 本当は 自分自身も 悩んでいます」(大阪府 ナーポリさん)

学生の合格ハードルを下げ続けるも成果が出ず、挙句の果てには自身の転職をも考えてしまう。転職した方が楽になれるかもと思ってしまうほど、採用活動に苦戦する姿がなかなかに切実。こちらは純粋に採用活動の大変さを嘆いたもの。

一方、後者は学生にキャリアプランを問いつつも、実は自分もキャリアについて悩んでいるというもの。面接官としての葛藤と人間味が感じられる。

AIや大谷翔平がらみなど、世相を詠み込む

佳作
「適性じゃ 相思相愛 だったのに フラれて恨む AI判定」(東京都 総務部長さん)
「手強いぞ 手書き作文 クセつよ字 手こずる判読 AI読める?」(神奈川県 賽の河原の採用担当さん)
「辞退率 6月に入り 急上昇 もうすぐ超える 大谷の打率」(大阪府 ナーポリさん)
「交渉は 自分でせずに エージェント 任せていいの オオタニさ~ん」(東京都 わっちさん)

優秀作にもAIを詠んだ作品があったが、生成AIがもっぱら話題の昨今、やはり川柳・短歌には絶好のテーマなのだろう。

また、採用活動とは何ら関係のない野球選手の大谷翔平さん。辞退率と打率をかけたり、エージェントというキーワードから引っ張り出してきている。それだけ大谷人気が高いということだろう。

お祈りメールはするもされるも嫌なもの

「新人は 半分なのに 経費倍」(東京都 つくしさん)
「新卒に こだわらなくて いいのです」(滋賀県 ロベルトさん)
「早々に 内定もらって これからは 第一志望の 企業を選ぶ」(滋賀県 クリスタルKさん)
「お祈りは するもされるも 心晴れず」(東京都 とるネコXさん)
「金じゃない 言ってる傍から 給料は?」(大阪府 Jさん)

その他の佳作は上記の通り。「お祈りメール」テーマは就活川柳・短歌により多かったが、採用担当者とて、喜んでメールを送っているはずもない。「するもされるも 心晴れず」、まさにその通りだろう。

詠まれているテーマごとにまとめ、筆者のコメントを少々述べつつご紹介したが、「2025年卒 就活川柳・短歌/採用川柳・短歌」オフィシャルページでは審査員による全作品の寸評を読むことができる。

(取材・文/大友康子)