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子どもの金融教育をユニークな視点で楽しく解説(後編)

誠実さや正直さも伝えたい

難しいお金の話をわかりやすく学べる「空想金融教室プロジェクト」は、みずほフィナンシャルグループと空想科学研究所が立ち上げたサイトで、日本の昔話を題材に金融の基本や仕組みを解説している。(前編)から引き続き、執筆を担当している空想科学研究所の主任研究員・柳田理科雄(やなぎた・りかお)氏の談話を紹介する。

柳田氏は、金融のことだけでなく、働き方や生き方の姿勢についても伝えたいと語る。

「みずほフィナンシャルグループの方たちのお話を伺って実感するのは、金融においても、正直さや誠実さといった“人間として当たり前のこと”が大切なんだな、ということです。お説教っぽい印象の原稿にはしたくないので、露骨に言葉で書くことは少ないですが、実際のみずほさんのお話のなかには『ちゃんと働こう』とか『正直に言おう』といった言葉が本当によく出てきます。全体としてそういう姿勢はしっかり伝えたいところです。

要は、みずほさんたちと接していて、そのたびに僕が感じていることが子どもたちに伝われば……と思っています。それによって、未来の子どもたちが、おカネに対して前向きに取り組み、その力を使って幸せな世の中を築いていくことを願っています」

「桃太郎」の鬼退治にかかる食費、旅費、武器などの費用を工面するために、鬼退治を一つの「事業」として融資してもらうことはできるのだろうか?
鬼退治プロジェクト(事業計画書)は銀行からみると不安要素だらけ! そこで、戦うのではなく「鬼ヶ島の不動産開発」という選択肢を提案。

 反響多く、題材のリクエストも

「空想金融教室プロジェクト」では現在、「さるかに合戦」「浦島太郎」「桃太郎」「かさじぞう」の4つの物語が展開されていて、資産形成や投資やNISAなどの仕組みを学べるようになっている。サイト公開後の読者の反響については、空想金融教室スタッフの方がこう話す。

「多くの読者さまから温かい反響や感想をいただいております。『専門用語が多く、難しい印象の金融ですが、みんなが知っている昔話に当てはめて説明しているので分かりやすい』『面白い視点ばかりで楽しかった』などのお声や、『ゲームやコミックも題材にしてほしい』『次は〇〇の昔話を題材にしてほしい』といったリクエストも届いております。2週間に1話のペースで新作コンテンツを配信していく予定ですので、ぜひ楽しみにしていただけると嬉しいです」

悲劇も金融視点で解決策を見出す

帰国便利帳の読者の中には、海外在住の親子も多い。異国の地にいると、アレンジ版とはいえ日本の昔話に新鮮な面白さを見出すこともあるだろう。

「『空想金融教室』のストーリーは、原作の概略を柳田理科雄先生が説明するところから始まります。日本の昔話は、日本の文化や価値観などをベースに話が作られており、その豊かなストーリーテリングは日本のルーツに対する理解や誇りを深めることに適しております。また、『空想金融教室』は、“どうすれば儲けられるか?”や“どうような投資商品を選ぶべきか?”といったHow toを伝えるのではなく、金融の本質的な考え方を楽しく学んでもらいたいという思いで作っております。

金融イコール投資や借金として捉えられがちですし、また、馴染みの少ない方には取っつきにくいものですが、金融の考え方は人生をより良く生きるための学びの要素を多く含んでいると私たちは考えており、柳田先生の力添えをいただきながら、このような学びを面白く、それでいて親しみを感じられる形でお届けしたいと願って取り組んでおります。

また、原作では悲劇に終わってしまうお話や悪者が退治されるお話に対して、金融視点で解決策を見出し、再構成していきます。どうすればその悲劇を避けることができるのか、善人と悪者が手を取り合い、悪者が更生する余地はないのか等を考え、最終的には空想金融教室版の新ストーリーを紡いでいきます。

それは、現代のさまざまな社会や身近な問題の解決手段として活用できるところもあると思いますし、物事の疑問点を立ち止まって考える力を養うことにもなるのではないかと考えています。

読者の方々には、気軽に読んでそれぞれの感じ方で楽しんでいただけると幸いです。また、「空想金融教室」をきっかけに、原作のストーリーや日本の文化を知っていただけると嬉しいです。ぜひ、今後の「空想金融教室」にご期待ください」(空想金融教室スタッフの方)

「お金の話はしない」というのは昔の話。「空想金融教室」を親子で一緒に読み、あれこれ意見を出し合いながら、お金についての学びを深めていくのもよいだろう。

(取材・文/中山恵子)