今、日本にありながら英語で学べる大学が増えており、帰国生の進学先の選択肢が広がっています。受験を検討する際に知っておきたいことや実際に通っている学生の声を紹介します。
なぜ、最近増えているの?
近年、英語で学位を取得するプログラムを導入する大学が増加するなど、日本の大学のグローバル化が進んでいる。背景には、2008年に文部科学省が策定した「留学生30万人計画」がある。2020年を目途に日本への留学生受け入れ30万人を目指すというもので、もともとは日本に来る留学生のためのものだったが、大学のグローバル化は帰国生にとっても朗報となった。
2023年8月には、文部科学省が「せかい×まなびのプラン」を発表。質の高いグローバルな人材育成など、日本の教育の国際化を推進していくたための施策だという。これにより、英語で学べる日本の大学はさらに増えていくと予想される。海外の大学に進学をするとなると、欧米の大学であれば学費と生活費などで年間300万円程は必要となるので、日本にいながらにして国際的な教育環境で学べるというのは、不況の現代においては経済的な面からも有難いといえるだろう。
英語で学位取得可能な大学(学部)数
専攻 | 大学(学部)数 |
---|---|
人文科学系 | 13 |
社会科学系 | 22 |
自然科学系 | 11 |
工学系 | 24 |
農・水産・獣医学系 | 3 |
総合・学際系 | 29 |
その他 | 12 |
出典=日本学生支援機構調べ(2020年2月時点)
入学選考の内容や時期は?
入学選考は、英語で書いた志望動機や自己推薦書など の書類審査と英語での面接のみが一般的で、筆記試験を 行うところは少ない。多くの大学では、出願時に英語能 力証明書(TOEFL iBT、IELTSなどのスコア)の提出が 必要になる。出願時期は、4月入学の場合は7月~ 11 月 頃が多く、9月入学の場合は 11月~翌2月頃が多い。
入学に必要な英語力の目安
TOEFL iBT | IELTS |
---|---|
71 ~ 80 | 5.5 ~ 6.0 |
出典=日本学生支援機構調べ(2020年2月時点)
受験&入学前に押さえておきたいこと
導入の有無&受験資格があるか
英語で学べる大学が増えているとはいえ、その大学のすべてで実施しているわけではないので、まずは自分が学びたい学部や学科・コースが英語学位プログラムを導入しているかを確認する。
受験資格は、学部・学科・コースによっても異なるが、「一定の英語力を有している者」「外国語で一定期間学んだ者」「IBDP(国際バカロレアのディプロマ・プログラム)を修了、または修了見込みの者」などの条件を定めているところが多い。
日英両言語の授業の割合
英語のみで学位をとれる学部や学科・コースの場合は、すべての授業が英語で行われる。「授業の大半を英語で受けられる」とする場合は、日本語での授業の履修も必要。
先生の国籍・日本人学生の割合
外国人の先生と日本人の先生の割合は、まちまちだ。外国人の先生が多ければ、日本にいながらネイティブの英語で学べる機会が多いというメリットがある。また、日本人の先生でも海外大学で博士号を修得していたり、海外大学で研究をしてきた、といった経験のある先生も多く、日本人の学生にとっては将来の進路を相談しやすい、といったメリットもある。
在籍する学生の国籍の割合も、大学や学部、学科・コースによって異なる。外国籍の学生が多ければ、多様な文化に触れることができ、日頃の会話も英語が中心になるなど、インターナショナルスクールのような環境で学べるだろう。
卒業生の進学・就職先
卒業生の進路が自分のイメージするものと近ければ、入学後のカリキュラムも自分の興味に合致する可能性が高い。事前に照らし合わせておこう。
監修
井沢 秀(いざわ・しげる)氏
大学通信情報調査・編集部長。私立中高から大学入試、就職情報まで、教育全般の情報分析を担当。新聞社系週刊誌、経済誌、教育情報誌などでの執筆多数。