育児中の母親100人に聞いた「家庭での性教育の実態調査の結果」について、(前編)では、子どもに性教育をしてきた人は44人、家庭でその役割を担っているのは主に母親であることなどを紹介した。(後編)では、性教育の具体的な内容と、調査結果を受けての専門家の意見をみていこう。
家庭で子どもに教えている内容は?
男子の母親の声をいくつか紹介すると、
- 人の誕生の仕組み、子どもの作り方、赤ちゃんのでき方(3人)
- 男の子と女の子の違いを教えた。身体的な特徴だけでなく心の違いについても夫婦で息子に教えた。(2人)
- 女性の生理について(2人)
- セックスについて、ゆるく伝える。セックスの仕方(2人)
- プライベートゾーンについて
女子の母親の声では、下記のようなものが挙がっていた。
- 身体のしくみの説明
- 生理について(9人)
- 子供ができる仕組み
- 水着で隠れる部分と口は、プライベートゾーンであること。
- 避妊のこと
家庭での性教育は必要と考える母親が多数
家庭での性教育は必要だと考えているかについて尋ねたところ、男子の母親の回答は「はい」が30人(60.0%)、「わからない」が19人(38.0%)、「いいえ」が1人(2.0%)だった。女子の母親の回答は、「はい」が39人(78.0%)、「わからない」が8人(16.0%)、「いいえ」が3人(6.0%)だった。女子の母親の方が男子の母親に比べて、より必要性を感じていることがわかった。
子どもへの性教育、どんなことに困っている?
子どもに対する性教育に対して「困っていることや悩みはない」と回答した人は、男子の母親で18人、女子の母親で23人だったが、一方で、困っていると感じている人も少なくなく、男子の母親では22人、女子の母親では21人にのぼった。具体的には、下記のような声が挙がっていた。
- 何からどう話をすればいいのかわからない
- どこまで教えるべきなのか、悩む
- お互いに恥ずかしい
- 学校で性について学んできた後に私たち夫婦をどのように感じて、見ているのか気になる
- 男の子の感情や行動を、母親である自分はすべてを理解できないこと
- 父親が積極的に教育する姿勢でないこと
- ユーチューブや本などを活用すれば良いのか悩んでいる
- セックスは好きだからっていう気持ちで簡単にやるものではないということを理解してもらうためにはどう伝えたらわかりやすいか?
では、どうしたら? 専門家がアドバイス
調査結果について、乳幼児向きの「おちんちん講座」や思春期の学生向きの性教育を行なっている日本泌尿器科学会専門医の岡田百合香先生が考察している。「子の性別による差異や適切な性教育の開始時期について有益な情報を得ることができた」と評したうえで、「では、どうしたらよいのか」についてアドバイスをしてくれているので、その一部を抜粋しよう。
「重要なのは、幼少期から性教育の基礎を積み上げておくことです。基礎とは、『身体の構造や男女の違い』『妊娠出産のしくみ』『プライベートゾーン』『(性的)同意』といった内容が軸となります。
『避妊』『性感染症』『性的欲求との付き合い方』という思春期のトピックは言ってみれば応用編です。基礎ができていない状態でこれらの話をしても、表面的な知識や実践が難しい理想論の提供にとどまってしまいます。
子どもが『性=恥ずかしい』という意識を持つ前の年齢(幼児期)から、子どもの発達や興味関心に応じて基礎の内容を伝えていくことで、スムーズに理解定着が進むことに加え、保護者と性の話をしやすい関係の構築にもつながります。
系統的な性教育を受けてこなかった保護者世代にとってはハードルが高いと感じるかもしれませんが、書籍や動画教材、勉強会等を活用しつつ、ご自身で学ばれることをお勧めします。女性の保護者だけでなく男性にもぜひ学んでいただきたいです。
子どものよりよい人生につながることはもちろん、大人にとっても自分の生や性を前向きに捉えなおす機会になるはずです」
「どうしたらよいのか」と考えているうちに、子どもはどんどん成長していくもの。岡田先生のアドバイスを参考に、必要なタイミングで我が子に性について伝えられる準備をしておきたい。