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世界に誇る日本のアニメ、どんな人がつくっているの?(前編)

『ソードアート・オンライン』にかかわる人々が登壇

日本のアニメはそのクオリティーの高さから世界中で愛されているが、そんな日本が世界に誇るアニメをつくっている人々による、小・中学生向けのオンライントークイベントが開催されたのでリポートをお届けしよう。

ソニーの教育プログラム「CurioStep with Sony(キュリオステップ)」が主催する夏休み期間のイベント「CurioStepサマーチャレンジ2023」では、子どもたちの学びや好奇心をサポートする多様なワークショップやトークイベントが行われたが、そのひとつとして8月27日に「アニメってどんな人がつくっているの?アニプレックスの人に聞いてみよう!」を開催。人気アニメ『ソードアート・オンライン』シリーズにかかわる4名が登場し、それぞれの仕事内容をわかりやすく伝えた。

アニメができて届くまでには多くの仕事がある

アニメ作品制作のリーダーとして登場したのは、アニプレックスの丹羽将己(にわ・まさみ)氏。プロデューサーとして『ソードアート・オンライン』『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』などを手掛けている丹羽氏が、まずはアニメをつくる仕事の全体像を紹介した。

「アニメにかかわる仕事は、大きく分けて3つあります。1つめは企画する人。こういうアニメを作りたいというところから始まって実際にアニメをつくって届けるまでの全体をみています。2つめはアニメをつくる人。絵を描いたり、色を塗ったり、動画にしたり、といった、実際にアニメをつくる作業を行います。3つめは、届ける人。これも非常に重要な仕事で、宣伝をしたり、グッズをつくったり、海外の人にも知ってもらうためのイベントをしたり、いろいろな形で届けています」(丹羽氏)

企画する人、つくる人、の仕事とは?

丹羽氏自身は<企画する人>であり、「例えば、ある原作をアニメ化したいと思ったとします。でも、思っただけでは動き出さないので、最初にやることは仲間を集めることなんです。原作者に『仲間になってもらえませんか』と許可を取ったり、どんな作品にしたいのかを考えたうえで監督に依頼したり、たくさん仲間を集めていくんです。これが企画です」と、プロデューサー業をかみ砕いて説明。なお、企画からアニメを届けるまで、だいたい2年以上はかかると言う。

続いて、<アニメーションをつくる人>として、A-1 Picturesの金子敦史(かねこ・あつし)氏が登場。自身の仕事について、「アニメーションプロデューサーという仕事をしています。私は、アニメをつくる人といっても絵を描いたり、色を塗ったりしているわけではなく、そういったクリエイターの方々に一緒に仕事してもらえるかどうか相談をしに行くのが仕事です」と話した。

そして、2017年に公開された『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』のキービジュアルなどを映しながら、原画を描く人、背景を描く人、色彩設計を手掛ける人、キャラクターや背景に質感を施す人などがいて1枚の絵が完成し、そこにキャッチコピーの文字などが追加されて番宣ポスターとなることを解説。ふだんはなかなか見ることができないキービジュアルの制作過程がスライドで示されたので、興味深く見た人も多かったのではないだろうか。

届ける仕事も多種多様

続いて、<届ける人>として、アニプレックスの栃木淑人(とちぎ・よしと)氏と、ソニー・ミュージックソリューションズの松崎知子(まつざき・ともこ)氏の2名が登場した。

海外担当の栃木氏は、「地域担当と作品担当という2つの仕事があります。地域担当では、韓国、東南アジア、中東、インドなどの地域を担当し、アニメに関するイベントの開催などを行っています。『ソードアート・オンライン』は作品担当でかかわっており、その作品の全世界での展開に対して責任をもつ仕事です」と話し、アメリカでのプレミア上映会やサウジアラビアでのアニメイベントの動画を紹介した。海外の人々が『ソードアート・オンライン』の世界に熱狂する様子が見て取れた。

松崎氏の仕事は、アニメ作品から新しい体験をつくることだという。「アニメ作品を見るだけでなく、その世界に入ったり、主人公たちと同じ体験ができるものをつくったりしています。リアルとバーチャルの両方の体験をつくっていて、リアルなものとしては、今年の4月に東京・新宿に、新宿ダンジョン攻略体験施設<THE TOKYO MATRIX>をつくりました」と話す。この施設はミッション攻略型のアトラクションで、現在体験可能な「ソードアート・オンライン -アノマリー・クエスト-」では、作品の世界を舞台に主人公・キリトとアスナを“討伐する”ためのクエストに参加する。「この体験施設にはソニーの技術も含めて多くの最新技術を使いました。企画から4~5年かけて完成までこぎつけました」と回想した。(後編)に続く。
(取材・文/中山恵子)

●YouTubeにてイベントのアーカイブ公開中

写真右から、アニプレックスのプロデューサー・丹羽将己氏、アニプレックスの栃木淑人氏、
ソニー・ミュージックソリューションズの松崎知子氏、A-1 Picturesの金子敦史氏