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「やらないことを自発的にやらせる方法」とは?(後編)

(前編)からの続き。

小学生~高校生の子どもを持つ母親の7割弱が子どもの生活態度に難しさを感じていて、中でも多いのは子どもが「やるべきことをやらない」という悩みである。ということが、『親子の法則 人生の悩みが消える「親捨て」のススメ』の著者でライフコーチの三凛さとし(さんりん・さとし)氏の調査により明らかになった。

三凛氏によると、子どもがやるべきことをやらないのは、親や学校から「やりなさい」と言われることがその子の”最高価値”と結びついていないからであり、親ができることとしては、子どもの「やる気が出ること」と「やるべきこと」を関連づけてファシリテートすることだ、というところまで(前編)で紹介した。

では、具体的にどうしたらよいのだろうか。三凛氏が勧めるのは、次のようなワークだ。

STEP1:まずは子どもの「価値の序列」を知る

子どもに次の13の質問をして、それぞれ答えを3つずつ(ベスト3は何か?)出してもらう。その後、その答えに対して「それは何のためなのか?」を尋る。このような問いかけをすることで、子どもが日々の生活の中で何を大切に思っているかがわかる。

  1. あなたの個人的な空間を占めているものは何ですか? 何で満たしていますか?
  2. あなたが一番時間を長く使っていることは何ですか?
  3. あなたが一番エネルギーを注いでいるものは何ですか?
  4. あなたは何に一番お金を使っていますか?
  5. あなたが一番整理整頓できているものは何ですか?
  6. あなたが親や先生など人から言われなくても率先してすることは何ですか?
  7. あなたが一番考えていることは何ですか?
  8. あなたが人生において「こうなってほしい」「こうなりたい」とイメージしていて、実際に現実味を帯びているものは何ですか?
  9. あなたが自分自身に最もよく話す(自問自答する)ことは何ですか?
  10. あなたがよく人に話すこと(話題)は何ですか?
  11. あなたはどんなことに感動しますか?
  12. あなたがずっと持ち続けている長期目標は何ですか?
  13. あなたが最も学びたい・知りたい・興味のあることは何ですか?

STEP2:「やるべきこと」をしたときのメリット、しないときデメリットを認識する

STEP1で子どもにとっての価値の序列がわかったら、「やるべきこと」をすると最高価値にどんなメリットがあるのか、「やるべきこと」をしないと最高価値にどんなデメリット(このワークでのデメリットは、基本的にメリットの反対を示す)がもたらされるのか、それぞれ20個以上書いてみる。

(例)やるべきこと:部屋の掃除
   最高価値:サッカーの試合で勝つ

メリット①:きちんと掃除して整理整頓することで、ユニフォームを探すことに時間を使う必要が なくなる。その分もっと練習できる。

メリット②:きちんと掃除し整理整頓することで、生活環境が整い、集中力が増す。その分、サッカーの試合でも集中力を発揮することができるようになる。

デメリット① :きちんと掃除し整理整頓しないことで、ユニフォームを探すことに時間を浪費することになる。その結果、練習の時間も減る。

デメリット②:きちんと掃除し整理整頓しないことで、生活環境が乱れ、集中力が落ちる。その分、サッカーの試合でも集中力を発揮できなくなる。

例に挙げたケースの場合は、子どもはサッカーが好きで、サッカーの試合に勝つことに最高価値を見出していることがわかった。この子は、部屋の片づけをしなさいと言ってもやらない。この場合、部屋を整理整頓することでサッカーにもよい影響があること、反対に部屋が片付いていないとサッカーにも良くない影響があることが認識できるようになる。

親子でこのワークを行うと、親は子どものモチベーションの源を理解でき、一方、子どもは「やるべきこと」を自発的にやる確率が上がるようになる。そうなれば、親も毎回ガミガミ言わなくて済むようになる。

やるべきことをやらない、ということでいえば、本誌の読者の中には、帰国直後で子どもが日本の環境になじめずに勉強やスポーツなどにやる気がなくなっている、という悩みを持っている人もいるかもしれない。そのような場合にもこのワークが効果的かどうか、三凛氏に尋ねたところ、以下の回答をいただいた。

「そのような子どもたちにも有効です。ただ、環境になじめないうちは、まずは安心させてあげることも大切ですので、帰国してしばらくはゆっくり過ごさせてあげることも子どもによっては必要かもしれません。新しい環境で落ち着いて、好きなことややりたいこと、大切にしたいことが日本の環境において見出すことができれば、ご紹介したワークはより効果的だと思います」

宿題をしない、練習をしない、部屋を片付けない、など何かしら子どもの生活態度に問題があるときは、子どもにとって良いタイミングで親子一緒にこのワークに取り組み、子どもが自発的に行動できるようサポートするとよいだろう。

(取材・文/中山恵子)