慣れない海外での子育てにはトラブルがつきもの。
特に、子どもが体調を崩してしまった時などは、保護者もパニックになってしまいがちです。そこで、医学の専門家に症状と対処法を伺いました。
子どもの歯科矯正
長期的な治療計画が不可欠。開始は帰国のタイミングを見計らって。
―欧米人は日本人に比べ歯並びが綺麗な人が多いように思います。それはなぜなのでしょうか?
欧米では歯は健康のパロメーターと捉えられています。
加えて良い歯の状態を維持していることは自己管理ができていることの表れという考えがあり、その証拠にアメリカでは履歴書に歯を見せたスマイルの写真を使うことが一般的なのです。
また、歯の治療は保健適用外となる国も少なくなく、高額な費用がかかる場合があることから、幼い頃から予防的処置を徹底させる習慣があります。歯科矯正も一般的です。
―日本と日本以外の地域では歯科矯正の方法は異なるのでしょうか?
近年では歯科矯正はより身近なものになっていて、治療に用いる装置や器具については、世界中ほとんど違いはないと言っていいでしょう。
しかしそうは言っても、その国の医療機関や担当医によって治療方法が若干異なる場合があることは忘れてはいけません。
歯科矯正は、一度始めると少なくとも2〜3年、場合によってはそれ以上の期間が必要となります。
また定期的なメンテナンスも欠かせません。つまり、歯科矯正は長期的な治療計画に基づき行わなければならないものであり、治療を受ける側にもしっかりとした意志や継続性が求められるのです。
そうしたことからも、やはりなるべく信頼のおける医療機関で、可能であれば同じ担当医による一貫した治療を受けるのが望ましいと思われます。
―海外で生活する日本人が歯科矯正を希望する際、何を気をつけるべきですか?
歯科矯正を始めるタイミングには気を使うべきでしょう。
転居に伴い通院する医療機関の変更を余儀なくされた場合、初診時の資料や治療の経過を元の先生から次の先生に引き継いでもらうことはもちろんできますが、先ほどお伝えしたように先生によって治療へのアプローチは異なる場合がありますから、本帰国の予定が間近に迫っていれば、現地では治療をスタートさせず、帰ってから始めてもいいかと思います。
ただ本帰国が当分先になりそうであれば、治療のタイミングを逃さないため、現地で一度相談されることをおすすめします。
歯並びはその人の印象を左右するだけでなく、発音や咀嚼(そしゃく)といった口の機能にも影響するからです。歯並びが悪いと特定の言葉が発音しにくくなったり、ものがうまく咬めなくなったりします。
―歯科矯正に頼ることなく、綺麗な歯並びをつくるには日頃どんなことに気をつけるべきでしょうか?
虫歯や歯周病が歯並びを悪くする原因となりますから、日々の歯磨きは欠かせません。
また、頬杖をついたり指しゃぶりをしたりといった仕草も歯並びに影響しますから、そうした癖にも気をつけるべきでしょう。
お話を伺った方
森山啓司氏
「東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科」教授。「公益社団法人日本矯正歯科学会」理事長。
編集/本誌編集部、田代くるみ(Qurumu LLC.)、イラスト/こばやしあき
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