青少年教育に関する調査研究などを行う国立青少年教育振興機構は、日本・米国・中国・韓国の高校生を対象として、進路と職業意識に関する国際比較調査を実施。昨日に続き、調査結果を見ていこう。
※出典:国立青少年教育振興機構調査報告書「高校生の進路と職業意識に関する調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較-」令和5年6月発行(グラフは報告書をもとに当編集部で作成)
日本の高校生「収入そこそこで、のんびり暮らしたい」
「仕事や生活に関する意識」として該当する項目を選んでもらうと、日本の高校生は「暮らしていける収入があればのんびりと暮らしていきたい」について、「とてもそう思う」と回答した割合が5割弱で、4カ国中最も高かった。
反対に、「できるだけ高い地位に就きたい」「自分の会社や店を作りたい」「望む仕事につけなくても、がまんして働くべきだ」について、「とてもそう思う」と回答した割合が米中韓に比べて著しく低い。「よりよい職場があれば、積極的に転職したほうがよい」「やりたいことにいくら困難があっても挑戦してみたい」も4カ国中最も低くなっている。日本の高校生は安定性を求め、社会的ステータスや起業への意欲が低いことが見て取れる。
米国、「やりたいことに挑戦する」自主性・積極性あり
米国の高校生は、「周りに反対されても自分がやりたいことをしたい」「よりよい職場があれば、積極的に転職したほうがよい」「やりたいことにいくら困難があっても挑戦してみたい」について、「とてもそう思う」と回答した割合が日・中・韓より高く、高い自主性や積極性が示されている。
中国、「できるだけ高い地位」を望む
中国の高校生は、すべての項目について「とてもそう思う」と回答した割合が、いずれも2~3割台にとどまっている。他の3か国と比較してみると、「地元で仕事や生活をしたい」の割合が3割強で、日・米・韓の約2割を大きく上回っている。「できるだけ高い地位に就きたい」「望む仕事につけなくても、がまんして働くべきだ」の割合も4か国中最も高い。反対に、「暮らしていける収入があればのんびりと暮らしていきたい」の割合は、4か国中最も低くなっている。
韓国、「仕事や生活に関する意識」突出した項目なし
韓国の回答をみると、12 項目に対して「とてもそう思う」と回答した割合は、いずれも 16%~36%にとどまっている。そのうち、「自分の会社や店を作りたい」は 26.6%と、ほかの3カ国より高いが、米・中との差があまりなかった。「社会に役に立つ仕事をしたい」「学歴より技術や技能を身につけることが大事だ」「周りに反対されても自分がやりたいことをしたい」の割合は、いずれも4カ国中最も低くなっている。
日本の高校生、現状に満足しているが、自己肯定感は低い
自分自身について当てはまる項目を選んでもらうと、日本の高校生は「いまの生活に満足してる」(「とてもそう思う」「まあそう思う」)と回答した割合は84%に達し、4カ国中最も高い。
一方、「自分はダメな人間だと思うことがある」と回答した割合も8割弱と米・中・韓より高い。反対に「自分にはどのような能力・適性があるか知っている」「いまの自分が好きだ」「相手が誰であっても自分の意見を言える」と回答した割合が4カ国中最も低い。
米国、現状に満足せず、自己意識が高い
米国の高校生は、「自分には自分らしさがある」「自分にはどのような能力・適性があるか知っている」「いまの自分が好きだ」と回答した割合がいずれも4カ国の中で最も高くなっている。米国の高校生の自己意識の高さがうかがえる。反対に、「いまの生活には満足している」と回答した割合は7割弱で日・中・韓より低い。
中国、前向きで自信のある姿勢
中国の高校生は、「いまの自分を変えたい」「見聞きした情報について疑問をもったり、自分で調べたりする」の割合がいずれも8割を超え、4カ国中最も高い。「自分には自分らしさがある」「自分にはどのような能力・適性があるか知っている」「いまの自分が好きだ」と回答した割合も米国に次いで高い。反対に「周りの人の意見に影響されるほうだ」と回答した割合は 55.7%にとどまり、日・米・韓に比べて低い。前向きで自信のある姿勢が見て取れる。
韓国、いまの生活やいまの自分に満足
韓国の高校生は、「相手が誰であっても自分の意見を言える」と回答した割合が7割弱で4カ国中最も高い。「いまの生活には満足している」「周りの人の意見に影響されるほうだ」「いまの自分が好きだ」と回答した割合も比較的に高い。反対に「自分には自分らしさがある」「自分はダメな人間だと思うことがある」「いまの自分を変えたい」「見聞きした情報について疑問をもったり、自分で調べたりする」と回答した割合は、いずれも4カ国中最も低くなっている。いまの自分や生活に概ね満足していると考えられる。
職場見学や就業体験により、ポジティブな職業イメージ構築を!
日本の高校生は、「仕事を義務と捉え、収入もそこそこあれば十分で、社会的地位も望まず、現状に満足しているが、自己肯定感が低い」ようだ。国立青少年教育振興機構青少年教育研究センターによると、「【職業について調べること】【職場の見学】【就業体験(インターンシップ)】といった活動に取り組むことや、【職業の種類や内容】について学習することが、ポジティブな職業イメージの強さと関連する」という。
調査報告書より筆者が特に興味深いと思った部分を抜粋して紹介したが、全文は158ページに及び、国立青少年教育振興機構のWebサイトに掲載されている。ご興味ある方はぜひ一読を。
(取材・文/大友康子)