“世界一素敵な過疎の町”の保育園への留学実例
昨日は未就学児のいるご家庭を自然豊かな地方で受け入れるプログラム「保育園留学®」の概要についてご紹介した。子どもと保護者が自然体験を満喫できるメリットがある一方、過疎地域には、子育て家族を招くことにより地域経済が活性化するメリットがあるという。
2021年11月から保育園留学受け入れをスタートした一拠点目の北海道厚沢部町(あっさぶちょう)「認定こども はぜる」を例に実例を見てみよう。
北海道厚沢部町は、20年前と比べて人口が約70%まで減少。子育て世帯の流出も多く、この先もさらに過疎が進む見込みだ。そんな中、“世界一素敵な過疎の町”を目指すとともに、子育て世代の人が移住・定住したくなるようにという願いを込めて「認定こども園 はぜる」を2019年に開園した。
天井が吹き抜けの遊戯室、ボルタリング、絵本のまちあいホールなど、設備充実。恵まれた環境を最大限活かしながら「あそび」を中心とした保育を行い、町が誇るこども園となっている。それでも定員稼働率は現在75%で、もっともっと多くの子どもにこの環境、のびのびとした育ちを享受してほしいと保育園留学の受け入れを開始した。
収穫体験などのアクティビティに家族で参加
もともと公園だった広大な園庭の一角には、やはり非常に広い菜園畑があり、ズッキーニやきゅうりなどを育てているので、季節によっては保育時間にそれらを収穫体験をすることもできるという。
留学期間中の休日に家族で地域のアクティビティに参加するのもいい。秋冬には椎茸やきくらげの栽培見学、夏にはじゃがいも掘やアスパラ・ブルーベリー収穫など。はじめて食卓の裏側に触れ、子どもの眼差しが変わっていく様子も見られるという。ほかにも厚沢部町の名産であるメークインを使った郷土料理作りなどの体験もできる(地域のアクティビティの参加は別途申し込みが必要で、費用も別途)。
快適な現代住宅に滞在
家族で滞在するのは、厚沢部町の移住体験住宅「ちょっと暮らし住宅」。寝具、洗濯機、冷蔵庫、フライパンや鍋などの調理器具、電子レンジ、炊飯器に食器まで、ひと通り揃っている。Wi-Fiもあるので、滞在施設で仕事をこなすこともできる。
食事については保育園で子どもが食べる昼食以外は自分たちで調達する必要があるが、厚沢部町では滞在スタート時に地元農家さんの野菜セットを数日分用意してもらえる。
保育園の留学費用は地域によって異なるが、北海道厚沢部町では大人2人・子ども1人の場合、1週間プラン17万円~、2週間プラン24万円~(パッケージのプランとなっており、保育料や宿泊費込みの価格だが、今後変動していく可能性もあり、あくまで参考価格。詳細は申込みの際に問い合わせを)。
インターナショナルプリスクールでも受け入れ
日本への一時帰国中の体験としても検討できそうな保育園留学だか、どっぷり日本語環境が心配という場合には、国際バカロレアを導入した国際基準の英語教育と、大自然で大胆な遊びを経験できるインターナショナルプリスクールでも受け入れを行っている。長野県上田市の「ISNプレスクール上田・ISN上田原キャンパス」だ。
同プレスクールでは保育にかかわる先生たちや、園に通うご家族もインターナショナル。「多文化多言語」を大切に、様々な価値観や多様性に触れ合いつつ、長野の大自然を満喫できる。
みんなで地域の畑へ出かけて土にふれ、虫を探し、子どもたちは夢中で目を輝かせる。保護者参加のファミリーデイキャンプがあるなど自然の中での体験もいっぱいだという。
この受け入れ事業、2023年3月には実施地域である市町村や受け入れ保育園、協賛企業14団体をメンバーとする「保育園留学®コンソーシアム」が設立。これまでの都市をはじめとする「1カ所だけでの子育て」から、より子どもの未来につながる「多様な地域での子育て」の可能性を創造し、過疎対策や保育の課題などを「地域横断で解決する」ことを目指していくという。
(取材・文/大友康子)