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受験の悲喜こもごもを昇華する「受験川柳」を鑑賞(後編)

昨日は「赤本」でおなじみの株式会社世界思想社教学社(京都市左京区)が発表した受験川柳の最優秀賞・高校生特別賞・中学生特別賞を鑑賞した。本日は優秀賞を鑑賞しよう。

思わずニンマリ、優秀賞の数々

優秀賞7作品と作者のコメントは下記の通り。

「クラス写真 ピースに混じり フレミング」
ミンミンゼミ(17歳)
クラスの集合写真で、ふざけて「フレミングの法則」をピースの代わりにしようとしていた。

「受験生 ウサギとなって かけ抜ける」
ラーメンボーイ
必死で勉強している様子を表しました。

「スマホ手に 赤本めくる 二刀流」
つきの(47歳)
スマホを片手に、赤本をめくっているのは、調べものなのか、「ながら勉強」なのか。

「かじかむ手 カイロ代わりの 単語帳」
りり
受験直前期は、外の寒さよりも時間を惜しむほうが多かった。単語帳を持つ手が震えるのも、冬ならでは。

「過去問で タイムスリップ 未来まで」
ありがとうさぎ(18歳)
過去問を解くことで、志望校に受かる未来が見えてくる。

「赤本が 示す2人の さようなら」
あいぷー(18歳)
彼氏とは志望校が違い、この受験が終わると、きっと別れてしまうのだろうと少し切ない気持ちになりました。

「レジに出す 第一志望は 胸を張り」
らくちゃん
第1志望の赤本は、堂々と胸を張ってレジに出しますが、第4志望校の赤本はさりげなくレジに置きます。

「受験川柳」作句で、心の余裕と広い視野が!

選者を務めた尾藤川柳(びとう・せんりゅう)氏(川柳家、女子美術大学特別招聘教授)は次のように選評する。

「第8回の『受験川柳』は、コロナ禍の最中にありながら、閉塞感から脱却し、作者の前向きな作品が多く見られ、選をする目もホッとさせられた。

大学で教えていると、入学年度によって学生の気質や積極性などの違いを感じることも多いが、育った時代や受験時代の社会環境が影響しているようにも見える。

受験の忙しさの中で他に目をやらなかった学生さんが勝つのか、受験以外にも目を向けた学生さんが勝つのかはわからないが、そうした中で『受験川柳』へ一句を投じた学生さんは、心の余裕で広い視野をもてるのではないだろうか。

入選数が少ないので、一人一人の声を拾いきれないが、すべての句と真摯に向き合った私にとって、その声からリアルな現実を追体験させてもらった。

受験勉強の最中、川柳を応募された皆様へ感謝申し上げるとともに、合格の栄冠を得られるよう心よりお祈り申し上げる」

(取材・文/大友康子)