不登校の原因は人一倍敏感で繊細な特性「HSC」のため?
不登校の児童生徒がデジタル教材を使って自宅で学習し、その学習活動を出席扱いとして学校に認めてもらう制度があることをご存知だろうか? ICT教材の開発と提供を行う株式会社すららネット(東京都千代田区)は、2018年からこの制度への対応を行っており、2022年9月15日「不登校生徒の出席扱い保護者向けセミナー」をオンライン開催した。
セミナー参加者(不登校の小中学生をもつ保護者)299人を対象に事前に行ったアンケートで、子どもの不登校の原因は人一倍敏感で繊細な「HSC」(Highly Sensitive Child)かもしれないと考えている人が約50%いたという(下図)。そこで、セミナーでは自宅学習で出席扱いが認められる「出席扱い制度」利用のポイントを解説するとともに、HSCを見分けるチェック項目やHSCの子どもへの接し方についても伝授した。
今日と明日とでセミナー内容を見てみよう。まず本日はHSCについて。
日本人の子どもの5人に1人はHSCの傾向
HSC(Highly Sensitive Child)とは「人一倍繊細な子」という意味で、日本人の子どもの5人に一人がHSCの特性を持つと言われている。子どもの持つ特性、気質であり精神疾患ではない。相手の気持ちを察知して行動したり、物事を深く探究することができるといった素晴らしい面もある。
HSC傾向があるかどうかのチェックリストは下記の通り。14個以上当てはまるとHSCの可能性がある。
HSCチェックリスト
- 感覚に強い刺激を受けると敏感に反応してしまう
- 環境の変化によく気づくほうだ
- 周りの人の気分によく左右される
- 痛みに対してとても敏感である
- 忙しい日は暗い部屋やベッドなど自分だけの空間で過ごしたくなる
- カフェインに対してとても敏感である
- 明るい光、強い匂い、ザラザラした布、近くでのサイレンの音などに敏感に反応してしまう
- 豊かな想像力を持っていて空想しがち
- 騒音などで気持ちが落ち着かなくなる
- 美術や音楽など芸術に感銘を受けやすい
- 時々気疲れしすぎてしまい、1人の時間が必要
- 良心的である
- ちょっとしたことで驚く
- 短時間でやることがたくさんあると取り乱してしまう
- 周りの人が落ち着かないと感じる環境にいるときはそうならないような配慮ができる(例:電気の明るさを変えたり、座席を移動
- 一度にたくさん頼まれるのを好まない
- 忘れものや間違いをしないように努力をする
- 暴力的な映画やテレビ番組はあえて避けるようにしている
- たくさんのことが自分の周りで起こると不快になる
- 空腹になると集中できなくなったり、気分が悪くなったりする
- 生活の変化に弱い
- デリケートな香りやいい香りを好む
- 一度にいろいろなことが起こると不快に感じる
- 苦しい、耐えられない状況は避ける、ということを普段の生活で最優先にしている
- 騒音や混乱した状況に悩まされる
- 誰かに見られていたり、競争させられたりすると、そうでないときに比べパフォーマンスが落ちる
- 両親や先生から「繊細な」「内気な子」と思われている
HSCという特性を知って、そっと寄り添う
セミナーでは、HSCの子どもに対してどのようなかかわり方をすればよいか、株式会社すららネット「子どもの発達支援室」室長・佐々木章太(ささき・しょうた)氏が次のようにアドバイスした。
「大切なのは、持って生まれた特性を本人や周囲の人々が知ること、そして、HSCの特性によって『生きづらい』状態になっている場合にはその状態を緩和し、過ごしやすい環境を整えていくことです。病気ではなく、障がいでもなく、このような特性があることがわかれば、他の子とは違う反応や態度を示す子どもを見ても、『さぼっている』『やる気がない』と強く叱ったり、発達障がいを疑う前に、HSCである可能性を想定することができます。ほとんどの場合、HSCの子どもは自分自身でその特性を理解しておらず、『なんで僕は、私は人と違うんだろうか?』と自己肯定感を持てず悩んでいます。周囲が気づき、そっと寄り添うことが求められています。
HSCの子どもは一般的に、大きな声で叱られること、個別に名指しで注意されること、丁寧でない言葉遣い(『お前』や『〇〇しろ』など)に、想像以上にひどく傷つき落ち込みます。またそういった言葉に過剰に反応してしまい、問題行動を起こしてしまうことも少なくありません。自分ではなくほかの子どもが叱られる姿を見るだけで恐怖を感じることもあります。そのため、HSCの子どもには、大人は落ち着いて接していかなければなりません。
そして、最も重要なことは、親自身がストレスをためすぎないということです。HSCの子どもは、身近な人のストレスを吸収して自分のことのように感じてしまう傾向があります。そのため、目の前にいる親がイライラしていると、子どもも落ち着くことができません。コロナ禍で、通常以上に忙しい中ではありますが、まずは親自身が深呼吸をし、リラックスできる方法を見つけ、余裕を持って子どもと接することが最も効果的な対処法です」
明日は「不登校児童生徒の出席扱い制度」利用のポイントについて見てみよう。
(取材・文/大友康子)