新型コロナウイルス禍での採用戦線も3年目を数えるが、コロナ後の需要回復などを見越し、企業の採用意欲は回復基調が見られる。6月1日の採用選考解禁から約1カ月が経過し、2023年卒者の就職活動は最大のヤマ場を越えたいま、採用活動の状況はどのようになっているのか。その進捗を確認すべく、『株式会社ディスコ』(本社:東京都文京区)が、運営する「キャリタス就活」の掲載企業をはじめ、全国の有力企業を対象に調査を行った。
調査対象 | 全国の主要企業16,125社 |
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調査時期 | 2022年6月27日~7月5日 |
調査方法 | インターネット調査法 |
回答者数 | 1,208社 |
調査機関 | 株式会社ディスコ キャリタスリサーチ |
エントリー数が「増えた」企業は、昨年の57.4%から31.3%に減少
まずは、採用母集団形成の状況について見てみると、「エントリー数」が前年度よりも「増えた」という企業は全体の31.3%にとどまり、「減った」の42.5%を11.2ポイント下回った。前年同期調査では「増えた」企業が半数を超え(57.4%)、増加が顕著だったが、今期は減少に転じている。
従業員規模別に見ると、いずれも減った企業が4割を超え、増えた企業が3割前後と、規模による大きな違いは見られない。一方、業界別ではややばらつきが見られ、流通・商社やサービス業では「減った」が「増えた」を大きく上回ったが、金融とITは増減が拮抗している状況だった。
選考への応募者数も「減った」が「増えた」を大幅に上回る結果に
「選考への応募者数」についても同様に、減少傾向が顕著となっている。「増えた」という企業は23.9%にとどまり、「減った」企業がその約2倍に上っている(42.7%)。規模別・業界別に見ても、すべての属性で「減った」が「増えた」を大幅に上回った。
また、いずれの属性においても上記のエントリー数の指標よりも「減った」の値が大きくなっていることから、エントリーから選考応募への接続にも苦戦したというケースも少なくなかったことが推測できる。
昨年は母集団が増えたことで、今期は相対的に減ったという面もあるだろうが、母集団形成につまづく企業が目立っている。
選考途中辞退者、内定辞退者は共に「増加」の傾向
前年度と比較して、選考段階での辞退者が「増えた」と回答した企業は33.5%。これに対して「減った」は13.5%で、「増えた」が「減った」を20ポイント上回った。
従業員規模別に見ると、「減った」の値はいずれの規模も1割強だが、「増えた」と回答した割合に大きな差が見られる。規模が大きくなるほど「増えた」の値が大きくなり、従業員1000人以上の企業では4割に上る(40.1%)。
内定辞退者については、「増えた」が32.9%で、「減った」(17.0%)の2倍近くに上る。選考解禁から約1カ月後の途中経過ではあるものの、思うように内定承諾を得られない企業が多いことがうかがえる。
面接の開始時期は「1月以前」が最多の13.4%
「3月採用広報解禁、6月選考解禁」という採用の日程ルールは7年目を迎えたが、企業の採用活動は一層早期化が進んだようだ。
面接開始時期を見ると、最も多いのは前年同様「3月中旬」だが、ポイントが大きく下がり(15.0%→11.7%)、その分より早い時期のポイントが増えた。特に「1月以前」の増加が目立ち、3月までの合計は5割台後半に達する(計57.9%)。従業員規模が大きいほど動き出しが早く、大手企業では「1月以前」が約2割に上る(19.0%)。
内定出しの開始時期は「4月下旬」が最多(11.6%)で、大型連休を前に内定を出し始めた企業が今年も多かったことが分かる。ただ、その前の「4月上旬」「3月下旬」も1割前後と比較的多く、採用広報解禁1カ月後にも山があった様子が見てとれる。
大手企業では、最初の山である3月下旬から4月上旬が内定出し開始のピークで、中堅・中小企業は4月下旬に内定を出し始める企業が最も多かった。
後編の記事では、採用選考の終了状況や内定者に対する満足度などについて紹介する。
(取材・文/松井さおり)