中学校の帰国生入試の合格者3名とそれぞれの保護者が合格までの道のりを詳しくご報告。あわせて、塾に教わった帰国生入試の最新事情もお届けします。
公立中高一貫校に合格したケース
Yさんとご両親紹介
中国に2年滞在。本人は小4の春から日本人学校に通って小5の終わりに帰国し、小6の4月、帰国生が全くいない首都圏の公立小へ編入学。その年の冬に帰国生入試を受けた。
帰国後に編入学した小学校と合わず、教科の成績は低下したが、地道に鍛えた作文力を武器にできたYさんとご両親。
ねらい|小学校での苦い経験を吹き飛ばす学校生活
編入学した公立小は楽しめていないため、同じ帰国生がいる中高一貫校に進学して、学校を好きになる! また家には子どもが3人おり、教育費のことを考えると国立か公立ならなおいい。
戦略|作文の練習を続け、追って+αの準備を
いくら勉強のヤル気がわかなくても、帰国生入試で課されることの多い「作文の練習」だけは1日1時間、毎日必ずする。志望校決定後、作文に加えて必要なものの準備を始める。
進捗管理
小4 春 |
中国で日本人学校に通い始める |
---|---|
小4 秋 |
現地の塾に通い受験勉強を始める |
小6 春 |
悩み発生 帰国して編入学した公立小になじめない |
小6 夏 |
成績は低下したが作文の練習は続ける |
小6 秋 |
目標発見 同じ帰国生のいる学校を志望校に |
小6 秋 |
作文の練習に加えて面接の特訓を開始 |
小6 冬 |
入試本番で力を出し切って合格 |
中2 現在 |
悩み解決 入学後はずっと学校が好き! |
「帰国したら受験」の流れに乗って現地で受験を決意
現在、Yさんは首都圏の中等教育学校の1年生としてコロナ禍ながら学校生活を楽しんでいる。Yさん親子が中学受験をしようと考え始めたのは、小4で中国に渡ってからだったという。「渡航前に住んでいた地域では、中学受験をする家庭はまれ。我が家も特には考えていませんでした。でも息子が通い出した日本人学校では『帰国したら受験』が当たり前だったんです。教育熱心な親御さん方に少しずつ感化されて『受験もアリだな…』と考えるようになりました」(Yさん母)
そこでYさんは小4の秋から現地の塾に通い出し、受験勉強に精を出すようになった。帰国後も塾に入り、中学受験に向けてスムーズに動き出せたように感じられたが、思わぬところに壁が立ちはだかっていた。
「息子はもともと通っていた小学校とは別の小学校に編入学。その学校のクラスメイトと合わなくて、学校生活を楽しめなくなってしまい、勉強にも身が入らなくなりました」(Yさん母)
結果、教科の成績は低下した。ただ、Yさんは読書好き。1日1時間の作文練習だけは頑張り続けたという。
入試で作文を重視する公立中高一貫校を志望に
転機は受験3ヵ月前だった。きっかけは、お母さんがYさんにかけた言葉だ。「母が『帰国生入試で作文を重視している公立中高一貫校があるよ。同じ帰国生も結構いるよ』と教えてくれて。『今』ではなく『来年』の学校生活に目を向けようと思いました」(Yさん)
そこから面接の猛特訓も開始。準備万端で本番を迎え、合格をつかめた。「今の学校には、帰国生も、親御さんが外国籍の子もいます。息子はそんな環境に居心地のよさを感じているようです」(Yさん母)
考察1|終わった今思う、これが失敗!
【親子の関わり】
「日本人学校は初めから楽しめていたので、日本の公立小へ編入学しても大丈夫だろうと呑気にかまえていました。息子の気持ちにもう少し寄り添えていたら…と後悔が残ります。現在は当時より意識的に、息子の様子をよく見たり、体調を気にかけたりしています」(Yさん母)
考察2|終わった今思う、これが成功!
【作文力強化】
「作文力を鍛えたのは、やってよかったことの第1位です。小さい頃からたくさん読み聞かせをして、読書好きに育てたことも功を奏したのではないかなと思っています。また、塾では小学校とは違う友だちに会えたので、気分転換にもなっていたようです」(Yさん母)
賛辞/保護者から子どもへ
「大丈夫だって、見てて!」と言って受験にのぞんだあなたの勇ましい姿、忘れないよ。今の学校生活が楽しそうで、本当に嬉しい♪
謝辞/子どもから保護者へ
帰国後、学校で大変だったとき、家に帰ると家族がにぎやかで癒されました。それと、今の学校をすすめてくれたお母さん。ありがとう。
◆専門家の所見
「ある保護者の方が『日本に帰ってきてから感じたのは、英語も大事ですが、そもそも日本語で論理的な思考や表現ができることがとても大切なのだなということです』とおっしゃっていました。読書により文章に触れる、会話やコミュニケーションにより感情に触れる、それを自分で文章にしてみる。普段から心がけたいことですね」(日能研)
お話を伺った塾
日能研グローバルサービス
中学受験予備校の日能研で2005年より展開して16年目を迎える、帰国子女生に向けたプロジェクト。難関校への合格実績多数。
※…「専門家の所見」でコメントした塾に、このケースのお子さんが通ったということではありません。家庭教師の場合も同様です。
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