教員約2400名、子ども・保護者3000組を調査
2020年度からプログラミング教育が日本全国の小学校にて必修化され、2021年度からは中学校での指導内容の拡充が図られているが、その実態はどうなっているのだろうか。特定非営利活動法人(NPO法人)みんなのコードがGoogle.orgの支援のもと、日本国内の学校教育におけるプログラミング教育の実態について、小学校教員1,037名、中学校教員1,362名、小学生・中学生・高校生およびその保護者3,000組を対象にした大規模な意識調査を実施し、報告内容を公開したので、その一部を紹介したい。(※中学校技術分野教員向けのアンケート調査は、全日本中学校技術・家庭科研究会との共同調査として実施)
7割以上の児童がプログラミングを楽しんでいる
【考察①】小学生の児童・保護者を対象とした意識調査では、プログラミング教育へ児童たちの反応として、 73.8%が「プログラミングは楽しかった」と回答。「あまりそう思わない」「全くそう思わない」との回答(7.7%)を大きく上回る結果となった。小学校のプログラミング教育必須化が決定した際に、一部から「プログラミングのプロフェッショナルではなく、学校の先生方が教えることで、プログラミングへの苦手意識などが増えるのでは?」といった懸念の声があったが、現状としては多くの児童が楽しみながら学習しているといえる。
プログラミング経験がキャリアに影響する可能性も
【考察②】小学生と高校生への意識調査の結果では、プログラミングを経験した児童・生徒のほうが、経験していない児童・生徒に比べて、プログラミングに対して良いイメージを持っていることがわかった。例えば、「将来プログラミングに関する仕事に就くか?」という質問に対しては、プログラミングの経験あり・なしにより、ポジティブな回答が小学生では2倍、高校生では3倍になった。IT人材の不足が叫ばれる中で、プログラミング教育の経験の有無が、その後のキャリアにも影響しそうだ。
先生側の準備度合いが児童の関心に大きく影響
【考察③】「プログラミングが楽しい」または「プログラミングにいいイメージがある」という児童の反応は、児童のプログラミングに対する関心度合いに大いに関係するが、このことは教員の研修時間に比例することもわかった。小学校の教員への意識調査の中で、「プログラミング教育後の児童の反応」について、7時間以上の研修を受けた場合と、1時間未満の短時間の研修しか受けていない場合やまったく研修を受けていない場合とを比べると、児童の関心度合いに大きな差があったからだ。
プログラミング教育を実施した後で、児童のプログラミングへの関心について最も近いものを選択してください(n=492)
●半数以上の児童がプログラミングに興味を持っていると感じる
●一部の児童がプログラミングに興味を持っていると感じる
●あまりプログラミングに関心のある児童はいない
明日掲載の(後編)では、調査結果の続きを紹介するとともに、調査関係者のコメントもお伝えする。
(取材・文/中山恵子)