体験活動の豊富さは教育格差を埋める一助
昨日に続き、文部科学省の「令和2年度青少年の体験活動に関する調査研究結果報告」を見てみよう。
子どもの成長には家庭環境の要因も影響することが考えられることから、子どもが置かれている環境(家族構成、収入、住環境、親のしつけ)を考慮して体験の影響を分析した。その結果、小学校の時に体験活動などをよくしていると、家庭の環境に関わらず、その後の成長に良い影響が見られることが分かった。
そこで、世帯収入の水準別に分けて体験と意識との関係を分析したところ、収入の水準が相対的に低い家庭にある子どもであっても、例えば、自然体験の機会に恵まれていると、家庭の経済状況などに左右されることなく、その後の成長に良い影響が見られることが分かった(一例としての下図参照)。
体験活動の豊富さは、収入の高低からくる教育格差を埋める一助になるともいえるだろう。
収入別に見た、自然体験の多少と自尊感情の関係
直感的にとらえられてきた「体験活動の重要性」に確かな裏付け
今回の研究により、これまで直感的に捉えられてきた「体験活動は、子どもの成長にとって大切な要素だ」という感覚に確かな分析方法により裏付けがなされた。例えば、家庭でキャンプやスポーツ観戦、音楽鑑賞や絵本の読み聞かせなど様々な体験を子育てに取り入れたり、CSR活動等の一環として教育的事業を実践する企業等の取り組みは非常に重要なものであることが分かった。
文部科学省は調査結果を総括して、次のようにまとめている。
「すべての子どもたちが置かれている環境に左右されることなく、体験の機会を十分に得られるように、家庭ではお手伝いや読書の習慣を身に付けるようにする、地域では放課後などに地域の大人と遊びを通じて交流する機会を設ける、学校では社会に開かれた教育課程の実現を目指して地域と連携しつつ体験活動の充実を図るなど、地域・学校・家庭が協働し、多様な体験を土台とした子どもの成長を支える環境づくり』を進めていくことが、よりよい社会創りにつながると考えます」
(取材・文/大友康子)