文科省が新世紀ベビーとその保護者を18年間追跡調査
小学生の頃に体験活動や読書、お手伝いを多くしていた子どもは、中高校生になって自尊感情や外向性、精神的な回復力が高い傾向にあることが、文部科学省が2021年9月8日に発表した調査結果(※1)より明らかになった。
※1…令和2年度青少年の体験活動に関する調査研究結果報告~21世紀出生児縦断調査を活用した体験活動の効果等分析結果について~
調査は2001年に出まれた子どもとその保護者を18年間追跡したデータを使い、小学生のときの体験活動や読書、お手伝いがその後の成長に及ぼす影響を分析。調査データのサンプル数は、各年約2万4000~4万7000。
体験や読書、お手伝いとその効果の関連性を検証した調査研究はこれまでにも実施されてきたが、今回のような規模(サンプル数2万以上)で追跡調査を使ってその関連性を明らかにする分析は、文部科学省として初めての取り組み。
小学生の頃の体験活動はその後の成長に好影響
さて、回答されたデータを分析したところ、小学生の頃に体験活動や読書、お手伝いを多くしていた子どもは、その後、高校生の時に自尊感情(※2)や外向性(※3)、精神的な回復力(※4)といった項目の得点が高くなる傾向が見られた。
※2…自尊感情(自分に対して肯定的、自分に満足している、など)
※3…外向性(自分のことを活発だと思う、など)
※4…精神的な回復力(新しいことに興味を持つ、自分の感情を調整する、将来に対して前向き、など)
小学生のときの体験活動や読書、お手伝いがその後の成長にどんな影響を及ぼすのか。まずは「体験活動」の調査結果を見ていこう。調査では、体験活動を次の3つに分けて分析した。
① 自然体験(キャンプ、登山、川遊び、ウインタースポーツなど)
② 社会体験(農業体験、職業体験、ボランティア)
③ 文化的体験(動植物園・博物館・美術館見学、音楽・演劇鑑賞、スポーツ観戦など)
その結果、自然体験では主に自尊感情(一例としてグラフ下図)や外向性に好影響、社会体験では小・中・高校生の時期の向学校的な意識(勉強・授業が楽しい)に好影響、文化的体験ではすべての意識に良い影響が見られることが分かった。
自然体験の機会の多少と自尊感情との関係
読書を多くすると、好奇心旺盛になり精神的な回復力もUP
次に「読書」を多くすることによる影響を分析したところ、新奇性追求(※5)や感情調整(※6)、肯定的な未来志向(※7)といった精神的な回復力や、小・中・高校生の時期の向学校的な意識(一例としてグラフ下図)に良い影響が見られることが分かった。
※5…新しいことに興味をもつ、など
※6…自分の感情を調整する、など
※7…将来に対して前向き、など
読書量の多少と向学校的な意識との関係
異年齢など多様な相手と遊ぶと、自尊感情や外向性などに好影響
また、遊び相手などによる影響を分析したところ、異年齢の子どもや家族以外の大人とよく遊ぶなど多様な相手と遊ぶ機会が多いと、自尊感情(一例としてグラフ下図)や外向性などに良い影響が見られることが分かった。
自尊感情と小学生時代の遊び相手の多様性との関係
お手伝い多くすると、すべての意識に好影響
お手伝いを多くすることによる影響を分析したところ、自尊感情や外向性(一例としてグラフ下図)を始め、精神的な回復力、向学校的な意識など、すべての意識に良い影響が見られることが分かった。」
(取材・文/大友康子)