理数系の側面から”イノベーター”を育てる教育のこと
プログラミング導入により日本でも急速に広がっている
「STEM(ステム)」とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)という理数系の教育分野の総称で、「STEM教育」とはこの4分野を組み合わせて物事を考え、新しいこと(概念・モノ)を生み出す力を育てる教育を指す。
STEM教育が誕生したのはIT化やグローバル化に対応する人材育成の必要性が叫ばれつつあった2000年前後のアメリカ。2009年には同国でSTEM教育向上のために多額の民間投資が始まり、2013年には前オバマ大統領が発した「新しいゲームを買うだけではなく、作ってみよう!最新のアプリをダウンロードするだけではなく、創造してみよう! スマホで遊ぶだけではなく、プログラミングしてみよう!」という言葉によって広く一般に浸透していった。
以降、ヨーロッパ等にも波及。アメリカでは近年、この「STEM」に創造性の意味を持つArt(アート)のAを加えた「STEAM(スティーム)」教育というものに変化している。
日本では、STEMとSTEAMの明確な区別はまだ見られないものの、今年度の小学校でのプログラミング教育の導入などをきっかけに、ここ数年で急速な広がりを見せている。
失敗を重ねながら生徒自身で発想を得ていく
2014年に日本初のSTEM教育スクール『ステモン』を開校した中村一彰氏は、STEMの学び方についてに次のように解説する。
「今までは理数系といえども知識偏重の趣が強く、例えば実験なら『先生による手順の説明を聞きながら板書をノートに書き写し、その後、生徒が説明通りに行う』という流れが基本でした。ですが、STEM教育では、例えばテコの原理や構造について物理や数学などあらゆる側面から知識やヒントを与え、生徒たちの発想の引き出しが増えた段階で『遠くに重いものを飛ばす投石機を作ろう』といった課題を出します。生徒は、得た知識や自らの発想を総動員して投石機作りに没頭するのです」
STEM教育のここがすごい!
①興味重視だからとっつきやすい
例えばプログラミングで何かを改造する課題では色や音、仕掛けなど、個々で好きなところにこだわることができる。理数系の分野が得意でない子どもも、興味に沿って課題を進められる。
②教科横断型授業で応用力がアップ
教科の枠に捉われず、さまざまな教科の知識や発想を組み合わせてひとつの目標を達成する学びを基本とするため、応用力、さらには物事を多角的に捉えて問題解決する力も高められる。
③失敗を恐れず挑戦できるように
使用する教材はブロックや電子教材など、失敗してもすぐに組み立て直せるものが多いので、スピーディーな試行錯誤が可能に。失敗もたいしたことではないと思えて、チャレンジ精神が養える。
④正解のない課題で個性が尊重される
課題にテーマはあっても正解はなく、みんなが同じ答えを出す必要ももちろんない。このため、周りを気にせずに取り組むことができ、それによって自然と個を認め合う力が付いていく。
⑤イノベーションを起こす力が付く
課題に取り組み続けていると新しい切り口を考える習慣が定着し、小さなイノベーションを起こすのが得意になっていく。ゆくゆくは社会で、大きなイノベーションを生み出す源にもなりうる。
お話を伺った方
中村 一彰氏 日本初のSTEM教育スクールを創設
小学生にSTEM教育を行うスクール『ステモン』主宰。元小金井市立前原小学校理科専科教員。プログラミング教育推進事業者として、東京都の公立小・中学校をけん引する。
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