教育の準備 基礎知識と海外滞在時から始める準備

vol.7

帰国生入試 «高校編»

国際化が進むなかで、帰国生を受け入れる高校は、国公立、私立を問わず日本全国で増加しています。 規制緩和によって普通科だけでなく国際学科や国際文化コースなどの設置が進む国公立校、 それぞれに個性あふれる帰国生への対応が進む私立校も見逃せません。 高校の「帰国生入試」の概要、実態、海外滞在中の準備についてお伝えします。

帰国生入試の基礎知識

帰国生入試を受験するための条件

帰国生入試を受験するための条件は、主に次の2つ。

1. 既に海外・日本国内合わせて9カ年の学校教育課程(小学・中学課程にあたるもの)を修了している、または入学年の3月末日までに修了見込みであること。
2. 海外の学校に継続して在籍した年数(継続在籍年数)が一定以上あり、帰国日から受験する日までの年数が経過しすぎていないこと。

 

条件

 2の「継続在籍年数」は2年以上、「帰国から受験までの経過期間は1〜3年の間で設定されることが多い。 また、「海外の学校」の定義を「英語圏の現地校やインターナショナルスクール」に限定していて、「全日制日本人学校」は含まれない場合もある(その際は、別枠として、全日制日本人学校の在籍者に限定した帰国生枠を設けて、試験を行う学校も)。
 そのほか、条件が追加される場合、「入学後は保護者と同居すること」、「指定する通学地域に居住すること(または、その予定があること)」、「保護者の帰国後に受験者本人だけで海外に在留した期間や、本人単独で留学した期間は、海外の学校での在籍年数に含まない」などが代表例だ。

 

選考方法

 一般入試では、私立は三教科(英語・数学・国語)、国公立では五教科(英語・数学・国語・理科・社会)の学科試験を中心に選考を行っている。しかし帰国生入試では、海外で受けた教育内容に配慮して、一般入試とは別の観点から評価できるよう工夫されていることも多い(下記参照)。 このことは、私立の場合は言うまでもないが、国公立であっても同じで、学科試験の教科数が三教科に軽減されているケースもある。
 さらに最近では、学科試験以外で選考を行うAO入試(※1)が行われていたり、得意な教科の配点率を上げられたりと、一般枠でも選考方法は多様化している。視野を広く持てば、チャンスは増えそうだ。

※1…AO(Admission Office)。入試事務所を中心に学校側の求める生徒像を選ぶ入試。基本的に、その学校で学習することへの目的意識が高く、意欲のある生徒が望まれる、書類審査や面接は、時間をかけて丁寧に行われることが多い

 

1. 作文・面接・書類で選考

 帰国生の受け入れを主な目的として設置された学校を中心に実施。学科試験は行わず、海外の在籍校での成績表や活動暦などを記した書類、日本語または外国語(英語の場合が多い)による作文、面接で選考する。

 

2.英語力を重視して選考

 私立の進学校に多い。学科は英語のみ、またはそれに国語・作文・適性検査・面接などが加わる。 三教科の学科試験を課す場合でも、「英語が高得点なら他教科が合格基準点以下でも考慮」、 「出願書類の英語能力試験の成績を含めて評価」などの措置が取られる。

 

3. 帰国生専用問題で選考

 国公立の大部分、一部の私立で実施され、専用に作られた学科試験(3または5教科)で選考。国語は一般の入試問題より難易度を下げる、英語をやや難しくするなどの工夫がされている。

 

4. 一般と同じ問題で選考

 国立と私立の難関校で多く実施され、一般生と同等の学力を要求。帰国生には合格基準点を若干下げるなどの配慮はあるが、競争はかなり厳しい。

 

スケジュール

 海外滞在中に日本の高校受験を迎える場合、さまざまな準備(下表参照)を考え、“早め早めに行動を起こすべきなのは言うまでもない。スケジュールで気をつけたいのは、子どもが全日制日本人学校ではなく、現地校やインターナショナルスクールに通っている場合だ。
 先に述べた通り、日本の高校を受験する場合、必ず「入学年の三月末日までに九カ年の学校教育過程を修了、またはその見込み」になっている必要がある。しかし、現地校やインターナショナルスクールに通う場合は、日本での修了月との違いから、その条件を滞たす前に受験期が来てしまう。この“ズレ”に対処する代表的な方法は三つある。

 

9カ年の学校教育課程を修了&見込みにする方法

(1)早めに帰国して公立中学校に編入し、3月末日までに修了見込みとする。
(2)海外の全日制日本人学校に編入し、3月末日までに修了見込みとする。
(3)海外の学校をそのまま卒業し、日本の高1の途中(多くは9月)に編入学する。

 ただ、どれを選ぶにしても、リスクは把握しておきたい。
(1)の場合は、日本の公立中学校に馴染めないことから受験勉強に集中できないことも。
(2)は、全日制日本人学校は運営母体が私立なため、いつでも編入学できるとは限らない。
(3)では、編入学試験自体が入学試験以降の欠員補充であることも多く、志望校が実施しないこともありえる。 とはいえ、こうした方法で見事ストレート合格を果たしているケースも少なくない。 また、通年で編入学試験を実施したり、入学年の6月卒業見込みでも受験を認める学校が少数ながら出てきたのは嬉しいこと。

 
 

滞在時からの準備

情報収集

 志望校の選定は、海外にいてももちろん可能だ。日本語環境を整えたインターネットでウェブサイトを閲覧したり、海外から書籍を入手するほか、大きめの都市に滞在していれば、日本の受験塾で情報を大量に仕入れることもできるだろう。
 選ぶ際、帰国生を受け入れている日本国内の学校の体制は大きく3つ(下記参照)に分かれることをふまえ、親子でじっくりと比較・検討してみよう。

 

帰国生受け入れ校の教育体制の代表例

(1)帰国生の受け入れを主な目的として設置され、生徒の総数を占める帰国生のことを中心にとらえた教育環境を持つ学校。
(2)帰国生の受け入れが主な目的ではないが、日本語の補習や一般生とは異なる特別な語学クラス、帰国生にも対応した生活指導センターなど、帰国生に対する“何らか”の体制を持つ学校。
(3)「帰国生枠」での入試制度は設けるが、帰国生を対象にした特別な受け入れ体制を持たず、基本的には一般生と同様の教育を行う学校。

 また、志望校が固まり始めたら、実際に学校へ足を運んでみたい。 帰国生を受け入れている学校では、帰国生に対応した学校説明会や入試説明会を開催するだけでなく、事前に問い合わせれば個別の学校訪問に応じてくれるところも数多い。 さらには、文化祭などの行事を公開していれば、それに行ってみるのも一案だろう。 里帰りや一時帰国を利用して、参加してみることをぜひおすすめする。
 ただし、応募する際に事前の予約が必要だったり、帰国生としての資格認定を義務付けている学校もあるので、計画はお早めに。

 

学習の準備

 海外滞在中に志望校を決めたとき、受験の準備はどのように進めるべきなのだろうか。 上記で挙げた「4つの主な選考方法」ごとに、その対策を紹介しよう。

 

作文・面接・書類で選考

 対策としては、何よりも海外の在籍校での学習や課外活動に力を注ぎ、充実した学校生活を送ることが第一だ。 こうした選考では、現地での成績や活動の記録も重要な選考基準となるので、できるだけ良い評価を得ておく必要がある。 また、作文や面接では、異文化での暮らしぶりや、地域とのかかわり方など、学科試験では知ることのできない意欲や知的好奇心の旺盛さを、じっくりと見られることも知っておきたい。
そのほか、作文や面接の対策としては、試験で使用する言語自体の勉強、文章作成法の練習、これまでの滞在・教育暦を振り返って意見をまとめておくことなどが有効だろう。

 

英語力を重視して選考

 まず、要求される英語力はかなり高いものだと心得ておきたい。 難解な長文読解が出題されることも珍しくなく、学校や選考方法によっては、英検準一級、TOEIC®800点程度を試験問題の基準としている場合もある。
 ここで気をつけたいのは、英語圏の現地校やインターナショナルスクールに通っていても、いざ“日本式”の試験に挑むと点が取れないケースが案外多いということ。 原因としては、こうした学校のESLでは、日本の英語の授業で教えられているような「文法事項」を習得しにくいためと考えられている。 そこで、対策としては、日本の文部科学省が認可する中学校の教科書や、それに準じた参考書で、日本の中学校で教えられている内容を総復習しておくとよいだろう。 また、日本の英語問題の出題形式に馴れておくことも重要だ。

 

帰国生専用問題で選考

 求められるのは、日本の学齢での標準的な学力。 問題のレベルは、日本の文部科学省認可の教科書内での基礎的な部分にとどめられることが多い。 そのため、極端に難しい受験用の問題集と格闘する必要はない。 学齢に合った参考書や問題集を入手して、基礎問題を多くこなすことが得策になってくるだろう。

 

一般と同じ問題で選考

 帰国生に対し、選考段階で多少の配慮はしてくれるものの、日本国内のいわゆる難関校を受験する子どもたちと同等の学力を求められることが多い。 そのため、海外にある進学塾に通ったり、通信教育を駆使するなどしながら、日本国内でその学校を志望している受験生と変わらない勉強をする必要がある。