国境越えの子育て

vol.3

国境越えの子育て

 
Vol.3

日本人として、国際人になってほしい――。

それが、滞在中から現在までの変わらぬ思い。

松本数実さん(45歳)
『東京YMCAインターナショナルスクール』スクールディレクター
 

日本人としての素養を息子たちに教えた

約5年間の駐在時、NY郊外にあるほぼ山手線1周分という広大な敷地で、アメリカ在住の日本人、日本語環境の子どもを対象にしたキャンプを主催する『東京ーフロストバレーYMCAパートナーシップ』にて、ディレクターを務めていた松本さん。  キャンプでは狷米の文化の狭間に生きるなかで、自らのアイデンティティを築くこと”を趣旨のひとつにしているが、2人の男の子の父親としても、その心は変わらない。

「多くの子どもたちにとって、生活は適応しても、日本人としてのアイデンティティを築きながらアメリカ社会で自分らしく生きていくことは、生易しいことではありません。うまく適応できる子もいますが、長年アメリカで暮らし、自分は 何国人なのか分からなくなっている子もいます。YMCAでは毎年夏に2〜4週間程度のキャンプを日本語で、日本文化・しきたりの中で行うのですが、たくさんの子どもたちがキャンプ自体を“故郷”と捉え、大きく成長していく姿を何度も目撃しました。よい機会ですので、うちの長男・次男にも参加させていました。特に、2人とも現地校に通っていましたので。現地校での収穫は多いのですが、基本的には単に英語で教育を行う学校ではなく、“アメリカ人のための学校”です からね」

 帰国は2012年夏。長男は中学2年生、次男は小学5年生での帰国となった。

「子どもたちはもっとアメリカにいたいようでしたが、ちょうどよいタイミングだったのではないかと思っています。あのままアメリカにいたら、長男は日本の中学校を、次男は日本の小学校を2度と経験できなくなってしまいましたから。日本の義務教育も肌で知ってほしいという思いもありました」

帰国後の学校選びでは、幸運な出会いもあった。

「長男が編入した公立中学校校長、次男の公立小学校校長は共に海外の補習校で教えていた経験をお持ちの方々。お二人とも、『帰国生のことは色々と理解できます。どんな小さい事でも質問してください』と言ってくれたんです」


 

学習面での悩みは多いが家族一緒に頑張るしかない

長男はサッカー部に入って友人を作り、次男も問題なく馴染んでいる様子。すべて順調に思える展開だが、学習面での課題はつきないという。

「渡米前に住んでいた家に戻ったので、長男は小3まで過ごした学友とまた一緒になりました。分からない漢字が多く、黒板の文章をノートに写すスピードも、まだほかの生徒のようにはいきませんが、学友のサポートを得ながら何とか追 いついているようです。アメリカでの英語の世界から日本の学校に戻り、環境変化によるストレスもやや抱えながら、文化的に完全に日本に馴染むのには少々時間がかかると思っています。幸い、私の現在の職場『東京YMCA』で帰国生向 けの英語サマースクールや英語キャンプなどを主催していますので参加させました。英語力の保持にも効果的でしたが、同じような境遇にいる帰国生と出会えたことも帰国後の日本への適応に役立ちました」

1年半後には、長男は高校受験、次男は中学校入学を控えている

「帰国生受け入れについて理解のある学校に入学できればと願っていますが、子どもたちがどんな将来を望むにせよ、渡航〜帰国を通して経験した全てのことを財産にし、自信を持って人生を歩んでほしいと思っています。そのためのサポー トは精一杯するつもりです」

 

 
滞在期間
◆アメリカ・ニューヨーク州・ウェストチェスター
2007年7月( 長男 小3、 次男 幼稚園年長)〜2012年8月
( 長男 Grade7、 次男 Grade4)。帰国後は、長男 公立中学
校2年に編入。次男 公立小学校5年に編入。